一番星を見つけて
ただ何となく、本当に何の前触れもなく僕は星を見に行った。
この街で最も空に近く幽幽たる場所。朱の塗装は剥がれ原色に戻りゆく空。周りには誰もいない。
「あ、あれ見て。一番星」
気早な明かりを指差しながら君に言った。
君は何も言わずに僕が指差した方を見る。
「君は僕にとって一番星だ、なんてね」
雰囲気に流されて柄にもないことを言ってしまう。
君は憂いを帯びた笑顔を見せる。
鈍く光る三等星
一歩後ろに二等星
白鳥座のデネブ
わし座のアルタイル
天頂近く琴座のベガ
一つ、また一つと灯る星々。
君は初めて口を開く。
「ねぇ、一番星はどこ?」
僕は瞬く。
星は尾を引き流れる。
一人天を仰ぐ。
星が溢れぬように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます