一番星を見つけて

 ただ何となく、本当に何の前触れもなく僕は星を見に行った。

 この街で最も空に近く幽幽たる場所。朱の塗装は剥がれ原色に戻りゆく空。周りには誰もいない。

「あ、あれ見て。一番星」

 気早な明かりを指差しながら君に言った。

 君は何も言わずに僕が指差した方を見る。

「君は僕にとって一番星だ、なんてね」

 雰囲気に流されて柄にもないことを言ってしまう。

 君は憂いを帯びた笑顔を見せる。

 

 鈍く光る三等星

 一歩後ろに二等星

 白鳥座のデネブ

 わし座のアルタイル

 天頂近く琴座のベガ

 一つ、また一つと灯る星々。


 君は初めて口を開く。

「ねぇ、一番星はどこ?」

 僕は瞬く。

 星は尾を引き流れる。

 一人天を仰ぐ。

 星が溢れぬように。

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