第14話 アデライドお母様、手紙を出す。
かわいいシャルロットへ
風薫る爽やかな季節、元気で活躍中のことと思います。
音を奏でるめずらしい絡繰りが評判になり、そちらのお店が飛ぶ鳥を落とす勢いで繁盛していると聞いています。夫婦二人で頑張って、小さなお店から順調に店舗を拡大し、今やそちらの王都の一等地にお店を構えるほどになったとか。お母様はとても鼻が高いです。
前触れもなくいきなり結婚したと聞いた時には驚きました。
さて、少し前からクーデター勃発で周辺諸国を騒がせていた我が国ですが、このたび国王陛下が替わりました。もう噂で知っているかもしれませんね。
陛下……元陛下や元王妃陛下、オーブリー元王子殿下をはじめ旧王族はほとんど粛清され、ついでに国名も変わり、バラデュール王国へと生まれ変わりました。
そうです。私たちの運命を変えたイザベル・フォン・バラデュール辺境伯令嬢のお父様であるエクトル様が、新国王陛下になりました。シャルロットがこの国を発った当時の情勢を鑑みれば、この結果は当然といえば当然かしら?
クーデターの最中、シャルロットもずいぶんと心配して、いっぱいお手紙をくれたわね。
実はお母様、エクトル様のお手伝いを少ししていたの。お手紙では詳しいことはなかなか書けなくて、やきもきさせてしまったと思うわ。ごめんなさい。
そうなの。お母様、お掃除を頑張っていたのよ。楽しかったわ。
そういえばそのお掃除中に、あなたの父親と元婚約者と元親友がそろって会いにきたのだけれど、なぜかエクトル様が大激怒なさってね。腐ってもあなたのお父様だから、……帰ってきた時によければお参りしてあげてね。
元婚約者と元親友? 察してください。
そうそう、イザベル様が無事にご結婚されて、バラデュール辺境伯家を継ぎました。これから生まれてくるであろうイザベル様のお子様が次代の王様になることも決まったので、バラデュール王国はこれからも安泰よ。
だからそろそろシャルロットも帰ってきて、フランセル家を正式に切り盛りしてくれたら嬉しいと思ってお手紙を出したの。もちろん、仕事のきりがいいところでいいからね。
……でもお母様、ちょっと頑張りすぎちゃって、フランセル家は子爵じゃなくて公爵になっちゃったから、手続きの都合上できればいったん、早めに、至急、帰ってきてくれると嬉しいわ。
過ごしやすい季節とはいえ、無理をしないよう身体に気をつけてね。
お母様より
追伸
そういえばお母様、バラデュール王国の初代王妃になりました。
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