君に贈り物を渡そう
私は月島君とウィンドショッピングをしている。
渋谷の街はオシャレなカフェや雑貨屋が立ち並んでいる。
並んで歩く瑠偉と奈歩。
私は花屋さんを見て立ち止まる。
(昔、お姉ちゃんと母の日のプレゼントを買いに行ったけ...朝顔の花言葉を教えてもらったのよね。固い絆とはかない情熱的な愛)
姉の奈津との思い出が甦って瞳が揺れる。
「香取さん」
月島君の声にハッとして横を見た。
「ごめんね。月島君、ボーッとしちゃった」
私が謝ると月島君は首を横に振る。
「何か食べようか」
ニコッと微笑む彼に私はコクリと頷く。
私たちは近くにあるレトロな喫茶店に入った。
ドアを開けるとカランと鈴の音が鳴る。
店内はアンティーク彫の作りで、ぬくもりを感じさせた。
「素敵なお店」
私が呟くと月島君が優しく微笑んだ。
女性の店員さんが明るい笑顔で接客する。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか」
「はい」
月島君と私は窓側の一番端の席に座る。
メニューを見て、私と彼はバニラアイスとレモンティーを頼んだ。
頼んだ品を待つ間。
私をじっと見つめる。
「月島君...何か私に話したいことあった?」
「どうして?」
「それは、」
夜に電話くれた時に微かに声が震えてたから、そう口に出そうになったけどやめた。
話したくなるまで待とう。
そう思った瞬間、店員がアイスクリームとレモンティーを運んできた。
バニラアイスにはミントの葉がのっていた。
「食べようか」
彼の言葉にコクリと頷く。
スプーンでアイスをすくい口に含んだ瞬間、上質なミルクの味が広がった。
「美味しいね。月島君」
笑みを浮かべる私に月島君も同意した。
「うん、すごく美味しい」
二人はアイスに夢中になる。
その後、レモンティーを飲みながら明日のことを話す。
「入学当初は夏休みの学校に行くことになるとは思わなかったよ。ちょっと緊張するかも」
月島君は私の言葉にクスと笑う。
「お盆の期間じゃなければ、活動に勤しんでる部活がたくさんあるし職員室に誰かしら先生いるから変わらないよ」
談笑した後、自分の分のお会計をしようとすると、月島君に制止される。
「俺が払うよ」
「でも」
レジカウンターに彼が先に向かうと、女性の店員さんに声をかけられた。
「優しくてイケメンな彼氏で羨ましいわ。またお店に来てね」
ウィンクをされてキッチンに入っていく。
(彼氏...他の人には私と月島君はそう思われてるのかな。
前に自分のことをどう思うか聞かれたけど、月島君が私を気にかけてくれる理由がわからない...クラスでは彼はイケメンで人気者で、可愛い幼なじみもいた。
私はお姉ちゃんのこともあって目立たないように、地味に過ごしていたから)
「香取さん行こうか?」
お会計を終えた彼は私につげた。
「そうだね」
◇◇◇
お店を出てしばらく渋谷の街を歩く
「香取さん、さっき店員さんに何か聞かれてた?」
心臓がドキッとした。
「え、あの...またお店に来てねて言われたの。月島君、その時一緒に行ってくれる?」
私は顔を赤くしながら誘う。
彼は柔らかい笑みを向ける。
「もちろん、約束しよう」
小指を出す彼に、私は自分の小指を絡める。
「約束ね」
◇◇◇
歩いてると、雑貨やアクセサリーが売ってるショップが目に入る。
私ははっと思いついた。
「月島君ちょっと待っててくれる?」
私はその場で彼を待たせて、お店に入った。
やっぱ彼に贈り物したい。
あるコーナーに行くと、キラリと光る輝きを見つけた。
10分後ー...
「月島君、お待たせしました。これプレゼントです」
私は包装された箱を手渡す。
「俺に?開けてもいいかな」
「うん。いつもお世話になってるから、お礼をしたくて」
瑠偉が包みを開けると月のチャイムがついた銀のブレスレットだった。
彼は包装紙を畳んで、箱と一緒に大事に鞄にしまってからブレスレットをつけた。
月のチャームを宝物のように触れたあと、私を見つめる。
「ありがとう。大事にする」
そう言って笑った月島君の顔は、私の心に焼き付いた。
◇◇◇
ブレスレットを送った後、彼は行きたい場所があるんだと私に話した。
そこはお姉ちゃんとよく遊んだ公園で、この前中学生に絡まれた場所。
(どうして、月島君はここに来たんだろう?)
彼と私はベンチに腰かける。
夕方の公園
子どもたちは親子さんと帰宅してる風景が視界に入る。
「香取さん...加藤先生は奈津さんの恋人で、彼女の願いで園芸部を作った。部長は香取さん姉妹が育てた植物に救われた話してたよね?」
月島君は私に疑問を投げ掛けた。
「そうだったね。偶然の重なりはすごいと思った」
素直に感想を述べる。
「俺もなんだ」
その瞬間、夏の風がざわりとふく
「どういうことー...?」
「9年前、俺は香取さんと奈津さんに助けられた。君たち姉妹に命を救われて、香取さんに会えたから生きていていいと思えたんだ」
情熱的に告白する瑠偉、奈歩はその告白に目を丸くする。
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