朗らかな声が癒した傷
両親が仕事に出てる間は、つかの間の平穏だ。
俺ら兄弟は閉じ込められた一室から見える外の景色が全てだった。
『にいちゃん。ひまわり、いつか外に出れたらいっしょに見にいこう?』
痣だらけの身体で笑う弟
俺は泣きたいのを堪えて言葉にする。
『約束だ』
◇◇◇
養父母からあの日以来、会ってない弟の話をされたことで心臓が高鳴る。
「弟が何か」
動揺を悟られないように尋ねると、養父の守が口を開く。
「彼は俺と同じ政治家の家系、沢村家の養子に入った」
弟は沢村家は厳格な家で厳しく育てられた。
だが生活の不自由はなく、期待に応えようと必死だった。
しかし、子どもが出来ないと思ってた養父母に、子どもが出来た途端に居場所がなくなって、悪い仲間と遊び歩いてるとのことだ。
今は進学校の快青学園中等部3年ー...
「どうして詳しく知ってるんですか?」
俺の疑問に養母が答えた。
「沢村家のお手伝いさんは私の古くからの友人なの。瑠偉、このことはあなたに話すか迷ったわ。でも知っておいた方がいいと思ったの」
そのお手伝いが、弟が部屋で電話をしているのを聞いたとのことだ。
『僕がこうなったのは、兄のせいだ。兄から全てを奪う』
弟の現状を説明をした養父母は顔が沈む
俺を空気を和ますように笑顔を見せる。
「弟とはあの日以来、会ってませんから。心配しないでください」
◇◇◇
帰宅後
瑠偉は部屋で自分の机の席に腰をかける。
スマホの電話張から、香取さんの名前をタップした。
(無性に彼女の声を聞きたくなった)
『月島君?どうしたの』
彼女の朗らかな声が、あの日のことを鮮明に呼び起こす。
このままだと殺されると思って、弟を置き去りにして家から逃げ出して、無我夢中で走ってたどり着いた場所が緑溢れる公園だった。
『ハァハァ』
ろくに食事を与えられなくて息が苦しい。俺はその場にバタリと倒れた。
このまま死ぬのかと思った時、同い年くらいの女の子が俺の身体を揺すった。
『きみ、だいじょうぶ?!おねえちゃんー!
こっちきて!おとこの子がたおれてる。』
倒れて力が入らない身体で、視界は心から心配してる顔の女の子を映した。
実の両親からDVを受けて弟を心配することはあっても、自分自身を心配されることはないと思ってた。
その女の子が言葉にした。
『いたいのいたいの飛んでけ』
心配してくれる子がいる。それだけで生きていていいと思えたんだ。
気がつくと涙で頬が濡れていた。
『香取さん終業式の日の午後、2人だけで会えないかい?』
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