向き合う

玄関には執事とメイドが出迎えていた。

60代の執事が瑠偉や美久に話しかける。

「瑠偉様、美久様お久しぶりでございますな」

旧知の仲なのだろう。月島君や浜口さんが笑顔で答える。

「高校の勉強で忙しくて」

「私は部活で時間があわなくてね」

執事が私を見て尋ねる。

「おや、こちらの方は?」

私は胸がドキッとした。

月島君が代わりに答える。

「友達だよ。加恋を心配してくれて来てくれたんだ」


若いメイドが目を輝かせる。

「お嬢様のお友達ならば熱烈に歓迎しないと」

執事の一人が加恋の部屋に様子を見に行った。

◇◇◇


しばらく、案内された応接室で待っているとガチャリとドアが開かれる。

「今は奈歩様、美久様だけ通して欲しいとのことです。」

月島君はそうだろうなという気持ちと、私と彼女を対面させて本当に大丈夫なのか複雑 そうな顔をしている。

私は安心してほしくて微笑む。

「大丈夫だよ。月島君」

浜口さんも私の後に続く。

「そうよ。もし加恋がこの子に手をあげようとしたら、私がとめるわよ」

私達の言葉に月島君は薄く微笑んだ。


◇◇◇

宮沢さんはネグリジェ姿

髪をおろした状態で私達を、自分の部屋へ迎え入れる。

彼女の部屋は床に白いもこもこの絨毯がひかれている。

丸いテーブルの置かれてる所に腰を下した。


「香取さん、昨日はごめんなさい。あなたに瑠偉を取られていくのが、悔しくてあんな行動を取ってしまった。」

仮面をかぶった状態だと、私を奈歩と呼んでいただろう。

「宮沢さんが謝罪してくれたから、私も今回のことは水に流すよ」

ニコと微笑む。

「加恋、彼女もそう言ってるんだから、学校に明日は来てよ」

浜口さんがそう言うと、宮沢さんが首を横に振る。

「無理よ...」


浜口さんは疑問を口にした。

「私は自分の嫉妬心を抑えきれないの!!香取さんに昨日と同じようなことをしてしまう。それで、瑠偉に嫌われるのが怖い。」

両手で顔を隠して涙を流している。


彼女は月島君が大好きなんだなと思った。この感情は私がお姉ちゃんのことが、大好きな気持ちと似てる。

『お姉ちゃんなんて嫌い』

私はこの言葉が最期になってしまった。嫌いだなんて嘘でもいったら駄目だったのに、宮沢さんは当時の私よりずっと素直だ。


「嫉妬の感情は私が受け止めるから、宮沢さんは月島君と向き合ってほしい。だって大好きな人が生きているのにこのままで いるのは、私だったら後悔するから!」

私が言葉にすると、浜口さんは口角をあげる。

「奈歩の言う通り、月島君と話しなよ。振られたなら私が慰めてあげるわよ。親友だからね」

ウインクをする美久

「私も宮沢さん、ううん、加恋と友達になりたい」


私と浜口さんの言葉に加恋はコクリと頷いて答えた。

「ありがとう。2人とも」

◇◇◇


香取さんと浜口が加恋の部屋に呼ばれてから、再び応接室に戻ってきた。

加恋が俺を呼んでいると言うので、一人で彼女の部屋へと向かう。

昨日、加恋が香取さんをあんな目に合わせた一因には俺がきちんと向き合って来なかったからだ。


「加恋、入るぞ」

コンコンとノックする。

部屋を開けると加恋は水色のワンピースに着替えて、髪をポニーテールに結っていた。

「瑠偉...」


「加恋、俺は君の気持ちには答えられない」

俺の言葉に彼女はそうよねと言うように、眉を下げている。

「うん」

「だけど、月島の家に養子に入って初めてできた友達は加恋だった」

加恋は顔を上げる。

「ありがとう。こんな俺と友達になってくれて」

そう言って優しく微笑んだ。

彼女は俺に涙を浮かべて抱きついてきた。

「瑠偉、ごめんなさい!」

彼女を抱き返すことはできない。その代わり加恋の頭にポンと触れる。


◇◇◇


加恋は3人が帰宅する際、お礼を言った。

「今日は来てくれてありがとう。明日は学校に行くわ。」

その表情は晴れ晴れとしている。


奈歩は笑顔で答える。

「待ってるね。加恋」

3人が帰ったあと、加恋はメイドに頼んで髪を切ってもらうことにした。


◇◇◇

翌日

学校に登校した奈歩は加恋が髪をボブにしたことに驚く

クラスメイトに可愛いと声をかけられている。

その様子に、心から安堵した。

彼女はクラスの中心に自然といる子だ。


◇◇◇

担任の加藤は出席簿を持ち、教室へと歩いていく。

『妹がいるんです。10歳下ですけど、可愛いんですよ』

奈津はデレデレだ。

『姉バカだな』

そんな記憶が胸をよぎる。


教室に入って、HR始めるぞと言葉にした。

宮沢や月島の顔を見たあと、香取を視界にいれた。

(奈津、お前の妹はすげえな。自分の力で状況を変えていける)

加藤は薄く笑みを浮かべた。


◇◇◇

奈歩は窓から外の景色を見たら、一羽の鳥が羽ばたいていた。自分

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