あなたへの想い ②世界で一番好き
加恋によって資料室に閉じこめられた奈歩
奈歩はドアをドンドンと叩く
「宮沢さん開けてよ!」
私が叫ぶと宮沢さんは喋り出す。
「あなたには、地味で目立たないままでいて欲しかった。私から瑠偉を取らないでよ。」
扉で姿は見えないけど、私は彼女が泣いてるように見えた。
その場から走りさる音が聞こえて、私はヘタリとその場に座り込む。
(彼女はあの時の私と同じだ。)
春休み
私はお姉ちゃんとショッピングに行く約束をしてた。
だけど、その日、お姉ちゃんはその日、彼氏も一緒にいいかと聞いてきた。
大好きなお姉ちゃんを他の人に取られた気になった。バカみたいな嫉妬で思ってもないことを口にした。
『お姉ちゃんなんか嫌い』
あの言葉が最期になるなんて思わなかった。
奈歩は両手で顔を覆う。
◇◇◇
奈歩を資料室に閉じ込めた加恋は、心のなかで彼女に謝罪する。
警備の見廻りが来たら資料室の鍵は開けられるから。
(今日は瑠偉に初めて会った日。私は彼に告白をすると決めた。だから2人きりでいたかった。)
校門で彼女を待つ瑠偉に声をかけた。
「瑠偉」
「加恋?」
私の登場に驚く瑠偉
「瑠偉、奈歩は先生に別の用を頼まれたから、ごめん先に帰って欲しいと言われたわ。」
私は微笑みを浮かべて言葉にした。
◇◇◇
閉じ込められて数時間経過していた。
奈歩は鞄に入った携帯を確認する。
電波が入ってない。時間は19時30分
(警備員の人が巡回に来たら、助けてもらえると思ったけど来る様子がない)
冷や汗がたれる。
実は警備員は資料室は誰もいないと思い込んで確認に来なかった。
校内は節電の為に19時には室内はエアコンが切られる。
7月上旬の為、室内は暑い。
私は頭がクラクラしてくるのを感じた。熱中症だろうか?
水分補給したくても直ぐに帰るつもりだったから、飲み物を持参していなかった。
バタンと床に倒れこむー...
(誰か助けて)
◇◇◇◇
瑠偉は加恋にカフェやゲームセンターに、連れ回されていた。
時刻は19時30分を過ぎている。月がキラキラと輝いていた。
橋沿いで立ちとまる加恋
「瑠偉、私は子どもの頃から瑠偉が好き。世界で一番大好き」
何をするにも人より時間がかかるけど、最後までやりとげる昔の彼女の顔だった。
月島の家に養子入ってから、俺がはじめて出来た友達だった。子どもの頃から知っている。
強引だけど、根は悪い奴じゃない。
だけど、俺は脳裏に香取さんが浮かんでしまう。
「加恋...俺は」
返事をしようとした時、スマホの着信が鳴る。
通話ボタンを押したら、部長の切羽詰まった声が聞こえる。
『月島君 奈歩ちゃんを知らないかい!?』
『香取さんどうしたんですか?』
『彼女、まだ帰宅してないみたいなんだ。立ち回りそうな場所をご両親も探したけど見つからない。これから加藤先生と学校に探しに行く話になってる』
『分かりました。俺も行きます。』
通話を切ったあと、瑠偉は加恋を見ると明らかに動揺してるのが分かる。
両手で彼女の肩を掴んで話す。
「加恋、香取さんに何かしたのか?」
◇◇◇◇
閉じ込められてから、数時間経過して倒れこむ奈歩は今までのことを思い出していた。
(お姉ちゃんが倒れた後、人付き合いが怖くなった。学校の時間が苦しくなって地味で目立たないように波風立たないようにしようと決めた。SNSだけの繋がりでいいって...
でも園芸部に入部して月島君や部長、加藤先生と交流してくなかで、学校に優しい居場所が出来た気がしたの...)
バンとドアが開かれる。
真っ暗な部屋に光がさす。奈歩はうっすらと瞼を開けた。
「香取さん!」
「月..島く..」
瑠偉は慌てて倒れてる奈歩の元に駆け寄り、横抱きにして資料室から助け出す。
そこで奈歩は意識が途切れた。
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