あなたへの想い ①育ちますように

「植木鉢は日当たりが良い場所に置こう。水道場が近い場所。下駄箱付近はどうかな?」

月島君の意見に私は頷く。

「いいと思う」

「じゃあ砂を持つね。」

砂を持とうとしたら、月島君に制止される。

「香取さんは植木鉢の方をお願い」

月島君は2つのビニール袋に砂を4袋ずつ入れて、軽々と持っている。

私は感心して、思わず手をパチパチと叩く。

「力持ちだね。月島君」

笑顔で話しかけると、彼は若干照れたように返事をする。

「そうかな?」


◇◇◇

私たちは植木鉢を移動させたのち、軍手を着用して砂を植木鉢に丁寧に入れていく。

奈歩はシャベルをもって丁寧に土を耕している。

その姿を見て、瑠偉は愛しそうに微笑んだ。


作業を完了させてから、私は月島君に声をかけた。

「先生から種は明日部長と植えようね」

私の言葉に月島君はピタリと動きをとめる。

「香取さん...」

何か言いたげの彼の言葉の続きを待つ。

「?」

「水上げしようか」

ニコと微笑まれる。

「そうだね」

何だったんだろうと不思議に思ったけど、私は水上げの準備をしにロッカーで、如雨露を取りに行く。


◇◇◇


「ホースであげる方が早いけど、如雨露で丁寧にあげた方がスクスク育ってくれる気がするね」

2人で水を花壇に上げていると、月島君が声をかける。


「香取さんさっき、丁寧に土を耕していたね。」

「お姉ちゃんの受け売りなんだ。」

私は瞼を閉じて、胸に手をやる。

『きちんと育つように願いをこめて』


お姉ちゃんとの思い出を糧にして、これからの道を歩いて行こうと思った。


「夏休みにはこれから植える種は花が咲くと思う。楽しみだね」

月島君は穏やかに微笑む。

彼の笑顔をみていると心が温かいものに包まれる。私はそんな気持ちになった。


◇◇◇


作業を終えて如雨露をロッカーに片づけた。

2人で教室に戻って帰り支度をする。

「私、お手洗いに寄ってくね」

「俺は終わったことを、職員室に伝えに行くから...」


「一緒に帰ろうか?」

月島君の誘いにコクリと頷く。

「うん」


◇◇◇

お手洗いからでる奈歩は加恋に声をかけられた。

「奈歩、ちょっと付き合ってくれる?」

そう言った彼女は笑みを浮かべていた。


「どこに行くの?宮沢さん」

連れてこられたのは、図書室の奥にある資料室である。

たくさんの資料がおかれている、こんな所で何をー・・

後ろを振り向くと、宮沢さんの姿はなくガチャリと扉が閉まる音


「ちょっと冗談やめてよ!宮沢さん!」

奈歩は扉を開けようとするも、鍵がかけられていて開かない。

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