7月ー③青い春
母の亜美と姉の病院にお見舞いに行った帰り道のことである。
奈歩は公園が視界に入る。
子どもの遊ぶ声、歳の離れた姉妹が砂遊びしてる姿を見かけて鼻の奥がツンとして、涙を溢さないように堪えていると、正面にクラスメイトの宮沢さんと月島君がいるのがわかった。
「あれ?宮沢さんと月島君、ここで会うなんて奇遇だね。」
私の言葉に月島君は穏やかに微笑む。
「そうだね。香取さん」
お母さんが私に声をかける。
「奈歩、お友達?」
「え」
何て返事しようか迷った時、加恋が言葉にした。
「私達はクラスメイトで友達です。」
ニッコリと微笑む。
『友達ー...』
その言葉に奈歩は先ほどまで抱えていた葛藤が薄れているように感じて、ほんの少し笑みを浮かべる。
瑠偉は奈歩の表情を優しい瞳で見つめている。
そんな瑠偉を見て、心の奥底にしまいこんでいる嫉妬が溢れだす。
奈歩は自分を見つめてる瑠偉に気づいて声をかける。
「月島君?」
加恋は瑠偉の腕をグイっと引っ張る。
「何だよ、加恋?」
瑠偉の反論を無視する。
「ごめんね。香取さん、私たちこれからデートなの。また学校で」
そう言ってからその場を離れていく。
(月島君...彼女いないって言ってたのに)
少し胸がチクリと痛むが気にしない。
お似合いだもの。あの二人
「奈歩、あなたも青春してるわね」
母の亜美の言葉に「何のこと?」と疑問を口にした。
「いずれ分かるわ」
心なしか嬉しそうな母をよそに帰路につく間、
ふと思い出したことがある。
そう言えば昔、お姉ちゃんと公園で遊んでる時にある男の子を助けたことあったな。
顔も名前もおぼろげだけど、あの子は今どうしてるだろう。
◇◇◇◇
現代軸
8月25日。夏休みの学校は生徒が部活動に精を出す。運動部は精力的に活動してる。
青空に蝉がミンミンと鳴る。
朝顔に水をあげおわる奈歩と部長。
「奈歩ちゃん、月島君が来るまでミーティングルームで休んでようか」
牧野の提案に「はい」と笑顔で答えた。
部長と2人で校舎に入り、ミーティングルームへ行く途中で加恋と遭遇する。
彼女は夏休み前までは髪をポニーテールにしていたが、今では私と同じようなボブになっている。
「奈歩、夏休みに学校に来たのは園芸部の活動?」
「うん、加恋は文芸部関連?」
「そうよ。」
図書館で借りたであろう本を見せる
ほとんどが恋愛の本だ。しかも略奪や不倫。私は苦笑する。
「瑠偉、もうすぐ来るんじゃないかしら」
その言葉に私は目を丸くする。
「あなたには負けないわ。」
そう宣言した彼女には、今までの嫉妬に駈られた表情ではなく、清々しい顔で心地よく感じた。
私は笑みを浮かべて、コクりと頷いた。
◇◇◇
ミーティングルームに着いた2人
牧野と奈歩はエアコンの効いてる部屋で、席に座り持参した水筒を開けて麦茶を飲む。
「奈歩ちゃん、よく彼女と仲良くなれたね」
部長の言う彼女は加恋のことをさす。
夏休み前にあった出来事を知ってる部長は、純粋に疑問なのだろう。
「あ~色々ありましたからね。月島君が来るまで7月に起きた物語を振り返りましょうか。」
私の提案に部長も笑顔で応じた。
「そうしよう」
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