7月ー②呼び起こされる過去の記憶
7月1日の午後
奈歩が姉の病院のお見舞いに言ってる頃
園芸部の部長の牧野と部員の瑠偉は、今後のスケジュールを考えていた。
「夏休みの水やり当番はローテーションにしようか?月島君」
牧野の言葉に「はい」と頷く瑠偉
瑠偉は8月のカレンダーを見て25日に目をやる。
「部長、この日は3人で集まりませんか?」
穏やかな表情で言葉にした。
「夏休みの学校に3人で集まるのもオツだね。けど、どうして25日?」
牧野の疑問に瑠偉は瞼を閉じる脳裏には、幼い時に出逢った奈歩の笑顔が浮かぶ。
「それは...」
瑠偉がゆっくりと言葉にした。
◇◇◇
下駄箱のところに加恋が腕時計を見ながら瑠偉を待っていた。
(あの子のことどう思ってるか聞きたい...)
しばらくすると、眼鏡をかけた園芸部員と一緒に瑠偉が出てきた。
私は微笑みを浮かべながら、彼に近づいていく
「瑠偉!」
私が呼ぶと彼の整った顔立ちが、ほんの少し狼狽したのが分かる。
「加恋?」
「瑠偉、ちょっと付き合ってくれる?」
園芸部の部長が気をきかせたのか、「月島君、じゃあまた」とさっていく。
◇◇◇
牧野は帰る途中、スマホのアプリを開く
『moonさん、私のせいでお姉ちゃんが』
春休みの頃に送られたDMを見る。
過去のやり取りでも、彼女は姉の件に大きく責任を感じているのを知ってる。
僕はDMを送ろうと文字を入力しようとしてやめる。
(本人が話したくなるまで待つか)
僕は溜息を零したあと、7月の青空を見上げる。
◇◇◇
瑠偉の前をスタスタと歩く加恋
「どこに行くんだよ。加恋」
加恋はその言葉に立ち止まる。
「瑠偉、正直に答えて」
ふと横を見ると公園がある。
瑠偉は子供の頃の記憶がフラッシュバックする。
月島の家に養子に入ったのは小2の時、それ以前の忘れがたい記憶
『アンタなんて産まなければよかった』
母はそう言って、俺が父に虐待を受けてるのを見て見ぬふりをしていた。
無意識に頭に手をやり、心が身体が震えているのが分かる。
公園には子供が遊ぶ声が聞こえるが、現実なのか定かではない。
「瑠偉、香取さんのこと好き?」
加恋の問いかけに反応しようとした瞬間。
「あれ?宮沢さんに月島君、ここで会うなんて奇遇だね」
温かみのある彼女の声
俺は震えが止まって心が落ち着いてるのがわかる。
「そうだね。香取さん」
一呼吸置いてから、俺は彼女に笑みを向けた。
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