7月ー①心の傷
青空学園は土曜日は午前中まで授業がある。
夏服のポロシャツとスカート
(どう考えても地味よね。)
奈歩は鏡で自分の顔を見て、自嘲めいた笑みを浮かべる。
学校に登校しようとした時、母親の香取亜美が声をかける。愛嬌のある顔立ちだ。
エプロン姿で髪を1つに結んでいる。
「奈歩、今日はお姉ちゃんの病院にお見舞いに行こうと思うの。」
母の言葉に目を丸くする。
「!」
「一緒に行くでしょ?」
母の誘いにコクリと頷く。
今日から7月だ。
朝、登校すると男女ともなく、「香取おはよう」「奈歩おはよう」と声をかけられた。
疑問に思ってると美久は話しかけてくる。
「加恋がね。あんたを地味子って呼ぶのはやめようってさ。私も今日から奈歩って呼ぶわ。」
美久の言葉に「はぁ」と曖昧に頷く。
加恋の席を見てみると、筆記用具を持ってノートを取っている。
(少し変な感じだけど、まあいいか)
奈歩のすぐあとに、瑠衣が入ってきた。
「おはよう。瑠衣」
笑みを浮かべて、加恋が瑠衣に近づき挨拶する。
「加恋...おはよう」
月島君は席に鞄を置いてから、私の所まで来て話した。
「香取さん、今日の午後開いてるかな?園芸部のスケジュール決めたいと思って」
月島君の誘いに私は眉を下げる。
「ごめんね。今日の午後は用事があるの。」
「そっか、なら部長と話してスケジュール決めた後にプリントして香取さんに渡すね」
気にしないでと笑みを見せる月島君
不思議だな。彼の笑顔を見るとマイナスな気持ちがプラスになる気がする。
「ありがとう」
キンコンカンコン
チャイムが鳴り、担任の加藤がいつもの白衣、眼鏡で入ってきた。
「HR始めんぞ」
加恋はノートに書いた文字を心で唱える。
(瑠衣があの子に心惹かれてる理由は同情。
同情)
加恋は瞳に暗い影を落としていた。
◇◇◇
午前中の授業が終わり、奈歩は学校を後にする。
母と姉が入院する病院の入り口前で待ち合わせした。
東京第一病院
201号室
姉の香取奈津は私が高校入学前の春に路上で倒れた。
診断は「脳死」
病室に入るとお姉ちゃんは生命維持装置をつけたまま眠り続けてる。
お母さんは医師と話しをしにいった。
「お姉ちゃん、あの日のこと謝るから目を開けてよ。」
鼻の奥がツンとして視界が揺らぐ。
あの日ー...
お姉ちゃんと喧嘩した。きっかけは些細なことだった。
「お姉ちゃんなんて嫌い!」
私はそう言って家を飛び出した。
その最中、夜道の路上で倒れた。私が飛び出さなければこんなことになってないんじゃないかって思いが消えない。
7月は青空の青さが染み渡り、心に抱えこんだものをさらけだす心地がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます