第4話 君への気持ち

夏休み

園芸部の活動で奈歩は学校に登校していた。

咲いた朝顔に水やり中。

「おはよう。奈歩ちゃん」

「おはようございます。部長」

部長が私のことを名字呼びから、名前呼びになったのにはあることがきっかけだった。

その理由は後で語るとしよう。


「朝顔綺麗に咲いたね。」

子どものようにしゃがんで目を輝かせている。「白い朝顔と赤い朝顔。花言葉は確か...」

部長がうーんと考えこむ。

「白い朝顔はあふれる喜び、固い絆。赤い朝顔ははかない情熱的な愛」

私の言葉に部長が口角をあげた。

「まるで僕や加藤先生、月島君や奈歩ちゃんを表してるな。」

如雨露を持ったまま、青空を見上げる奈歩

「そうですね」

二人で思い出に触れていると、朝顔の種を買いに行った時の記憶が脳裏を過る。


◇◇◇


6月下旬。

奈歩が入部した為、園芸部は正式に承認されて部費が支給された。


金曜日の放課後

校門の前で集合と担任の加藤が園芸部用のグループLINEで知らせてきた。

部長と先生を待つ間。

入部した日と同じく、月島君と二人きり。

横顔を見る。整った顔立ち。長い睫毛。

奈歩は改めて実感した。

彼のようなイケメンの隣に、地味子と呼ばれる私がいて大丈夫なのか??


「月島君は彼女いるでしょ。モテるもの」

何となく気になってたことを彼に聞いてみた。

「いない。どうして?」

(え?いないの?) 

驚きが顔にでてたのだろう。

月島君は私の顔を見てクスっと笑った。

「いくら、モテても本当に好きな人に好きになってもらわないと意味がないから」

熱のある瞳で見つめられ奈歩は戸惑う。

(月島君?)


「月島君、香取さんお待たせ。クラスのHRが長引いて」

朗らかな声音で部長の牧野葉月が現れた。

「大丈夫ですよ。加藤先生は?」

「職員会議で遅れるって。先に行ってろて」


先ほどのことはなかったのように、月島君はいつもの月島君に戻っていた。

そのことにホッと胸を撫で下ろす。


「じゃあ、行こうか?香取さん」

月島君の言葉に私は質問した。

「種はどこに買いにいくの?」

「それは部長から」


薄く笑みを浮かべる月島君に部長は笑顔だ。

「駅前のホームセンター.ホームズさ」


◇◇◇

園芸部3人の会話を柱の影で聞いていた人物がいた。隠れていたのはショートの髪のクラスメイト。浜口美久だ。

バト部に行く途中に奈歩たちに出くわして、思わず隠れた。

(本当に好きになって欲しい人に好きになってもらわないと意味がない)

月島君は地味子に告白でもするんじゃないかという表情と声だった。


あの二人付き合ってるのかな?

数日前の加恋の言葉を思い出す。

ジトジトした暑さ、焦燥感が胸を駆け巡る。

あと数日で7月だ。

美久は振り切るように、体育館へと足を向けた。


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