第3話-① 優しく見守る月。動き出す想い

ミーティングルームにはグレーのカーペットに茶色の長方形の机が会議室のように並べられて、ホワイトボードが置かれていた。


(あれ、誰もいない....)

腕時計を見ると、午後12時20分だ。

勇んで来てみたから拍子抜けだ。

思案していると、後ろから声をかけられる。


「中に入らないの?」


「うわ!」

驚いて振り返ると、ジャニーズ顔のイケメンである月島君がそこにいた。

「つ、月島君。何故ここに...」

あまりの驚きに心臓がばくばくである。

「俺、園芸同好会所属なんだけど。」

頬をぽりぽりとかく。


私は目をぱちくりさせた。

(え~!いかにもスポーツ部のエースという顔で??)

心の中で盛大に突っ込む。


長机にお昼ご飯を置いてから二人は席に着席する。

隣同士。

「とりあえず先生と部長か来るまでお昼食べながら待とうか」

「そうだね」

月島は持参したサンドイッチ、奈歩はお弁当のおにぎりをパクりと口に含む。


静寂が続く。

(私から話しかけた方がいいの?でも何話したらいいか。わからない!!)

「香取さん」

静寂のなか突如、彼が私の名を呼ぶ。

「な、何でしょう?」

「加藤先生が部員が3人いたら、部に昇格する話て聞いたから来たりした?」

真摯な瞳で尋ねられる。

「それは違うよ。心が動いたのは先生が言ってた居場所の話かな。」

お姉ちゃんも言ってた優しい居場所。

瞳が微かに揺れる。

「居場所?」

尋ねられてコクリと頷く。

「学校で肩の力を抜いて楽に息を吸える場所欲しかったの...」

(月島君には理解は難しいかもしれないけど....)

私はチラリと月島君の顔を見ると、一回瞼を閉じて彼は口を開いた。

「よく、わかるよ。香取さんの気持ち」

優しい顔。穏やかな声でつげられて私は頬が熱くなるのを感じた。

「植物が好きなのあるけどね」

照れ隠しに笑顔でつげる。

「それは知ってる。学校で咲いてる花、いつも優しい笑顔で見てるから...だから、加藤先生ナイス人選と思うよ。」 

見られていたとに、私は更に顔が熱くなるのを感じた。


すると、二人がミーティングルームに入ってきた。

「ごめん、遅れた。」

眼鏡をかけた前髪を揃えた真面目そうな青年と、同じく眼鏡をかけた白衣と天然パーマが特徴の加藤が入ってた。

「ワリイな。二人とも。購買部が混んでた。」


「自己紹介するね。僕は園芸同好会の部長。牧野葉月。よろしくね。香取さん」

「はい」

握手を交わす。


「月島君も今日から3人だ。部の昇格祝いをしたいな。いいですよね。先生?」

キラキラに目を輝かせて加藤に尋ねる。

「ああ。それじゃ、週末の金曜日の放課後。種買いに行くか。」


私の園芸同好会。もとい園芸部入部初日はこんな感じで過ぎていったのである。


その日の夜

部屋で奈歩はSNSのアプリを開く。


『moonさん。園芸部入ることになったよ』

笑顔のスタンプを押した。


すると既読がつき、返信が届く。

『nahoさんにとって素敵な居場所になりますように』


その言葉に奈歩は頬を綻んだ。

月が優しく輝く夜の出来事。


同時刻

牧野葉月、月島瑠衣はそれぞれの自宅でスマホに触れていた。

もう一人、自宅マンションのベッドに寝転んだまま担任の加藤がスマホ画面を眺める。


「これでいいんだよな?奈津」

加藤のスマホ画面には髪を一つ結びして、チャームポイントの白いへアバント。

フリルをつけた白いワンピースを着た奈歩の姉

香取奈津が笑顔で映っていた。


End


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る