第3話 優しい居場所
4限目が終わり、昼休みの時間になる。
青空学園に併設されてる学食やコンビニに行く為に、生徒たちが教室から出ていく。
私は持参しているお弁当を持って、2階にあるミーティングルームへと行くことにする。
担任の加藤が現実の世界にも居場所を作った方がいいと言ったとき、正直余計なお世話と思った。別に地味子と呼ばれてることには、何とも思ってない。むしろ、愛着あるニックネームだ。
深い付き合いしなくても、一緒にお昼を食べる人たちだっている。
だけどー....
「地味子どこ行くの?」
髪をショートにしているメイクも濃い派手な女子。
「ちょっと、加藤先生に呼ばれて」
いつも同じくお昼ごはんを一緒に食べる美久の隣にいる宮沢加恋をチラリと見ると、奈歩は目を反らされてしまった。
(まあ、この前、課題断っちゃったしな。)
特に気にせず教室を出ると、奈歩が出たあと月島瑠衣もコンビニの袋に入ってるサンドイッチを持って教室を出ていくのを思わず加恋が、立ち上がって引き止めた。
「瑠衣どこに行くの?」
チャームポイントのポニーテールが左右に揺れる。
「部活のミーティング」
「!」
瑠衣が教室を出たあと、力が抜けたように加恋は席に座る。
「月島君は部活何やってるの?加恋」
(美久は私が瑠衣のことなら何でも知ってると思ってるみたいだけど、幼なじみであって恋人ではない。)
「前は園芸同好会って言ってたけど」
担任の加藤に呼ばれた奈歩が脳裏に過る。
確か加藤は園芸同好会の顧問だ。
「あの二人、付き合ってるのかな」
ポソリと呟く加恋
「あの二人って?」
「瑠衣と....香取さん」
思い詰めた表情で問う加恋に、美久は目を丸くしたのち、ぷっと吹き出した。
「まっさかー、ジャニーズばりのイケメン君と地味子だよ?」
美久は外見だけでないと決めつけてるが、人が人を好きになる理由に理屈はいらないんじゃないかと思う。
「そ、そうよね。」
私は苦笑いをした。
少なくとも、瑠衣の視線の先にはあの子がいる。
胸がズキンと痛い。
加恋は苦い想いを、誤魔化すように持参した水筒のお茶をゴクゴクの飲み干した。
◇◇◇
1階にある1年の教室から、2階のミーティングルームまで階段で移動する奈歩
談笑しあう生徒とすれ違う。
奈歩は姉の奈津のことを思い出していた。
自宅の庭を手入れしてる奈津
あれは春休みのことだったろうか。
如雨露で花に水をあげている。
「奈歩も高校で部活やればいいのに」
「嫌だよ。面倒だし、」
私はSNSの友達がいればいい。
暗い顔になる奈歩の頭をわしゃわしゃ撫でる奈津。
「ちょっとお姉ちゃん?」
「SNSの繋がりと平行して、学校に居場所を作るのも悪くないわよ。それに、その場所は奈歩の優しい居場所になるかもしれないわ。」
そう言って優しく微笑んだお姉ちゃんは、トレードマークの白いヘアバントをして、水色のワンピースが似合ってた。
(私が園芸部の話に興味を持ったのは、担任の加藤先生とお姉ちゃんが同じこと言ってたから。)
居場所ー
私にもできるかな?
そう思いながら、奈歩はゆっくりとミーティングルームのドアを開けた。
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