Sid.51 親としての考え方
経営者は嫌いだ。
偉そうにふんぞり返り人を顎で扱き使う。従業員なんて、ただの奴隷だ。人が死のうが生きようが、そんなのお構いなしに己のためにのみ利益を追求する守銭奴。
世の中の経営者は全てそうだと認識している。人の心も生活も気にしない。
人を使い捨てても
政治家も嫌いだ。
国民のために行動する政治家なんて、今の日本にひとり足りとて存在しない。
私腹を肥やし票集めのために不正だけを行う。庶民からは税を巻き上げ、どれだけ苦しんでいても知らん顔をする。
見ているのは財務省と企業のみ。
役人も国民なんてどうでもいいのだろう。建前上は国民の奉仕者だけどな。実態がこれほど乖離してる存在は他にない。
死ぬほど嫌いだ。
税と言う金を巻き上げ、愚かな政治家に吹き込めば、湯水のごとく税を使い倒せる。
死ねばいいのに。
微塵も国民のためになってない。
目の前に居る経営者だが。
「娘の人生は娘のもので、私のものじゃない」
自己選択の結果、苦労しようと、それは望んで得た結果。助けが必要であれば助けることも吝かではないが、だからと言って口を挟む気は無い。
親の思い通りの人生を歩ませる気も無い。
「娘が選んだ相手を排除してなどあり得ん」
仮に犯罪者や犯罪者予備軍だの、真っ当な生活すらできない、そんな存在であれば排除するのもやむを得ない。だが、そうでない限り、余計な手出しは一切しないと言ってる。
「君が娘とどう付き合おうと、娘がそれを望んだのであれば、それは尊重する」
親が口を出す問題じゃない。
アドバイスくらいはするが、とは言ってるな。
「今の常松君を見て将来像を判断するのは、さすがに早計」
それでも現時点で学年九位の成績を残した。そこは称賛するし、努力した結果なのだから誇れと。
その調子で頑張り続ければ、将来の展望も描き易かろうとも。
先々、官僚を目指してもいいし、社長を目指してもいい。志の高さがあれば文句を言う筋合いも無い。
「それが、どうして社長や事務次官以外は人じゃないなどと」
頭を抱える父親が居る。
どれだけ人でなしと思われているのかと、さすがに悲しくなるそうだ。
「誤解されてたのね」
「卑屈になり過ぎるからだよね」
母親と姉の言だ。
鴻池家は、どこぞの良家の如く厳しく管理する気は無いらしい。
「子どもとは言え人権はある」
なんでも厳しく自分の思いのままに、などと時代錯誤なことを要求する気も無い。
娘の目指す幸せの形は親に理解できずとも、それで本人が納得していればいいのだとも。
横から口を挟んでも良い結果をもたらすとは限らない。
ならば好きにさせるそうだ。
「身分差を気にするのもおかしな話だ」
法の下の平等は絶対のもので侵害して良いものでは無い。
身分を笠に虐げて良いものでも無い。貧乏だろうと金持ちだろうと、同じ人であることに変わりはない。命の重さも平等。貧乏人は死んでいい、などあってはならないそうだ。それはただの優生思想でしかなく、命を選別することに繋がりかねない。極めて危険な思想だとも。
才幹にしても人それぞれ。得意な分野もあれば不得意な分野もあろう。
得意な分野を伸ばして結果、手にするものが大きければ、それに越したことは無い。だからと言って、駄目だった場合に責めても仕方ない。
「娘が君を選んだのも何かの縁だろう。好きにすればいい」
とは言え、学生の内から羽目を外して妊娠だのは避けてくれと。
自立した人間になるためには、余計な口出しをせず、考えさせることが重要だそうで。
レールを敷いたり答えを用意してしまうのも駄目。あくまで寄り添う存在が親であると。
「あとは二人で考えればいい」
とにかく、口を挟む気は無いし、文句を言う気も無い。何をしていても結果を出したら、それを称賛しこそすれ排除なんて、とんでもない。
「とりあえず最初の実績は示したのだから、胸を張って堂々としてればいい」
それを維持し向上させていれば、文句を言う筋合いはないそうだ。
「考え過ぎなんだよ。君は」
しかも悪い方へ悪い方へと。マイナス思考は深みに嵌まるだけで、明るい展望を描き難くなるから、少しは楽天的になれだとさ。
どれだけ経営者が憎いのか知らないが、経営者もまた千差万別。
言うように救い難い存在も居れば、従業員に寄り添う存在も居る。
全部が全部、クズじゃないぞと。
「役人や政治家はまあ、憎まれてこそだな」
憎まれ役は必要だから、だそうだ。
損な役回りな分だけ、特定の業界や人に恩恵を与えるのも已む無しだそうだ。
本来そうであっては困るし、広く
これもまた多様性が進めば已む無しであろうと。
「誰かの利益は誰かの損になることも、ままあるからな」
完全に等しく、なんてのはそもそも理想論だそうだ。
「まあ、娘を大切にしてくれれば、私から何か言う気は無い」
そう言うことだからと席を外した。
母親と姉だが「さっさと綾乃を抱いてしまいなさい」だそうだ。
まずやってしまえば、愛しさも湧いてくるだろうと。
「可愛い声で鳴かせてみなさいよ」
「そうだよね。まあ妹の喘ぎ声を聞く趣味は無いけど」
笑いながらそんな話をする母娘だ。変態め。
鴻池さんを見ると「抱け」と迫る圧がな。目が物凄く訴えてるんだよ。
部屋に戻ると「勉強ですが、今夜はそんな気分では無いですね」と陽奈子さんは言う。
確かに、気が削がれ過ぎて身が入らないだろう。
「では、私は帰りますので、あとはお二人で楽しまれると良いですよ」
帰っちゃうのかよ。陽奈子さんとなら、喜んでとか思ったけど。鴻池さんを見るとなあ。服のボタンに手を掛けて外そうとしてるし。
すっかりその気かよ。
部屋を出る際に陽奈子さんが「童貞はお嬢様で卒業してくださいね」と。代わりに「ご褒美で私を抱くのはありですよ」だそうで。
抱けるのか。いや、そうじゃなくて、鴻池さんを見ると「あたしが先」だそうだ。
「いいのかよ」
「ご褒美は仕方ないから」
「先生だが?」
「欲しいんでしょ。仲いいもんね」
なんか棘がある言い方だが、そこはオスの本能を刺激するのだろうと。
「あの胸だもんね」
胸、だな。
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