第14話 君と出会って
人生できっと1番波乱の起きた夏休みが終わり、冬が訪れ、先輩方が笑顔でこの学校を去って行き、気づけば高校2年生の春になっていた。
真新しい制服に身を包んだ新1年生が緊張しているような顔つきで校門を潜っているのを教室の窓から遠目で見ていた。
私も去年の今頃はきっと全くおなじだったと思う。
新しい学校生活への期待と不安でいっぱいだった。
気づけば学校にも慣れて、気づけば1年生が終わってた。そんな気がする。
ー私はバスケ部の部長になった。
今までもやって来てたけどやっぱり少し不安はある。
副部長は世良だ。すごく安心する。
今日は部活動勧誘の日だ。
私は部長ながらコミュ障寄りなので勧誘はうちの部活のコミュ力お化け達に任せている。
そこにはもちろん咲樹もいる。
私はそれをただ眺めているだけ。結構楽。
ただぼーっと外を見ていると、夏の記憶が鮮明に浮かび上がる。
あの時自分の気持ちを咲樹に伝えていなかったらどうなっていたのだろうか。たまに考える。
あの日から時間が一瞬で流れて行った。それと、咲樹とは距離も近づき昼は一緒にご飯を食べたりしている。
時間が経つにつれて咲樹の色んな所が知れた。
咲樹は怖いのがすごく嫌いで、実はめちゃくちゃ負けず嫌い。咲樹曰く、「南国系」の食べ物は食べれない。咲樹の家にいるうさぎには「ルー」
猫には「カレー」ってつけちゃうくらい食いしん坊でいつも何か食べてる。
あとは……
「翠!!!」
すると教室のドアから私を呼ぶ声がした。
振り向かなくても分かる。
「……咲樹。」
あとは……私を見つける事が得意らしい。
どこにいても、何をしてても見つけられるらしい、。
「さすが。よくここが分かったね。」
私は振り返って咲樹を見た。
勧誘をしてたからか、首にボードをぶら下げている。
「翠部長のくせにサボってんの〜?ずるい!!」
「サボってるんじゃなくて見張りだし。」
「サボりじゃん。」
咲樹に勢いよく突っ込まれた。断じてサボりではない。
「じゃあうちも休憩〜!」そう言って私の隣に移動して2人でぼーっと空を眺めた。
しばらくして咲樹が口を開いた。
「うちさぁ…この学校選んで良かったなぁ…」
「……どうして?」
「翠がいたから。」
そう言って私を見た。
「あの時、うち翠に気持ち伝えれて良かったと思う。今、超幸せ。」
私はふっと笑って咲樹に向かって言った。
「私もさっき同じこと思ってた。」
「まじで?やっぱ運命かぁ〜!!」
そう言って咲樹は私の手を掴んだ。
「うちらは、これから先も、ずっと一緒にいるし、うちが離さないし、嫌だって言っても翠の事手放す気は無いよ。おばあちゃんになってもずっと一緒にいるし、死ぬ時も一緒だよ。」
咲樹がそう言ってにこっと笑った。
ーほんっとに敵わないなぁ……
私は心の中でそう言いながら、
「私も咲樹を手放す気なんてないから。」
そう言った。
するとちょうど下から世良の声が聞こえた。
「咲樹〜!!!!!看板持ってるくせにサボってんな!!!!!」
めちゃくちゃ声がでかかった。
「えっうちだけ!?翠もサボってんのに…」
そうぼそっと呟いたと同時に世良が
「翠は見張りだから!!咲樹と一緒にすんな!」
と大声で叫んでいた。え、聞こえてないよね?
「もう怖いな…じゃあねっ翠。見張り……?頑張って」
と若干不服そうにそう言いながら走って下に向かって行った。
しばらくして下に咲樹の姿が見えた。世良に怒られてる。少し申し訳ない。
私は見張りという名の仕事をしつつ、また空を眺めて咲樹を見つめた。
すると咲樹はこっちに気づいて私に手を振ってくれた。世良に頭叩かれてる。
ー私を見つけてくれてありがとう。
私はそう呟いた。
◇
好きな人と付き合えるのは400分の1の確率ならしい。
その数字がきっかり正確ではないんだろうけど、ただ限りなく低い確率で、きっと付き合えた2人には2人の物語があって、楽しいことばかりではなくて、衝突する事もあるだろうけど、2人だけの物語を思い返すたび、
「きっと私たちの出会いは、偶然じゃなくて必然で、きっと地球の裏側にいても、性別が違くても、歳の差があっても、貴方と必ず出会うのだろう。」そう感じる気がする。
今思えば、会った瞬間から咲樹という1人の人間に堕ちていたのかもしれない。
400分の1の計り知れないような確率で君に出会えて、君の笑顔が見れて、君の声が聞けて、人生のパートナーになってくれたこと。
ーきっと私は将来永劫この幸せを忘れる事はないだろう。
ー1章 finー
君に伝えていいですか? 空音 @sorane_vv
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