第11話 君に伝えたくて。ー咲樹sideー
翠と最近話せてない。
話そうとすると何を言えばいいのか分からなくてつい避けてしまっている。
翠の前の言葉が本当なら死ぬほど嬉しい。
けど翠がうちなんかを好きになるはずがないと思ってしまう。
ーうちは今、質問攻めになっている。
好きな人がいるとカミングアウトしてしまったからだ。
「告白早くしないと他の人に取られちゃうかもよ?」
うちはその言葉に煮え切らない返事をした。
もちろん伝えたい。けどいざ翠を目の前にすると言葉が出なくなってしまうのだ。
うちは質問攻めに疲れ果てて盛り上がってるメンバーにバレないように更衣室から出ようとドアノブに手をかけた。
ドアを開けるとそこには目を見開いた翠がいた。
◇
「あっ翠!遅かったじゃん!世良は〜?」
メンバーが先に翠に声をかけた。
「世良は監督に呼ばれてる。私は自販機寄ってた。」
翠はメンバーにそう言った。
「そうだったんだ!てか聞いて翠、咲樹にもついに好きな人が出来たんだって!!!」
「ちょっ……」
うちは焦って言葉を遮るとした。けれど
「あの声のボリュームなら聞こえてるって(笑)
そっか〜めでたいじゃん付き合ったら報告待ってる。」
と淡々とうちにそう言って帰りの準備をしようとしていた。
「も〜!相変わらず翠は反応うっす!!先越されたんだよ!?うちら〜」
メンバーが再び翠にそう言った。
「遅かれ早かれ咲樹が1番早いと思ったけどね。
だって咲樹、可愛いもん」
「うちらも可愛いでしょ!!」
そう突っ込まれた翠は笑って流していた。
けどうちは顔が熱くなってしょうがなかった。
なんで期待させるようなこと言うんだ。
いっそ突き放してくれた方が何億倍もマシだ。
ー翠以外の人と付き合うわけないじゃん。
◇
いつも通りの帰り道。みんなで帰っていると1人が翠に向かって駆けて来るのが見えた。
「あれっ確かあの人翠の同志?だっけ?」
穂乃果がそう言った。
「でもあれ。絶対翠の事好きだよね〜丸わかり。でも翠は気づいてなさそうだけど〜」
「翠ってさ…好きな人とかいるんかな?」
うちは探るように穂乃果にそう尋ねた。
「ん〜……夏休み始まったくらいにね、聞いたんだよね。そしたら…なんて言ったと思う?」
と穂乃果に突然質問されたのでうちは少し考えながら
「ん〜……翠のことだから、推しに近いタイプとかじゃない?」
うちがそう答えると、穂乃果は勿体ぶるように首を振った。
そして穂乃果はこう答えた。
「それがねぇ……なんと!咲樹みたいな人!って答えたんだよ〜!」
それを聞いた途端うちの胸は高ぶった。
ただ表では冷静に「え、うち?」とだけ答えた。
「どうしてって聞いてみたの。意外だったから!そしたら……」
ーうーん……なんでかは分からないけど…なんか、一緒にいたいって思ったんだよね。
「って言ってて、咲樹には言うなって言われてたんだけど…ってちょ!!!咲樹!?」
うちは最後まで穂乃果の言葉を聞かずクラスの男子に話しかけられている翠の所へ向かった。
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