第9話 君のそばにいたいけどー咲樹sideー
最近不思議と翠に避けられている...気がする。
別にあからさまに避けられてるわけじゃなっからなんとも言えないけどそんな気がする。
でも部活では最低限のコミュニケーションはとるし、元々翠自身自分から積極的に話しかけるタイプでもないからたまたま話せてないのかもしれない。
私は朝いつも通り体育館に行きみんなに挨拶して、練習試合の準備をしていた。
もちろんそこには翠もいて挨拶だけでもしようと声をかけようとした時私はあることに気づいた。
ー翠体調悪いな……
明らかにいつもより顔色が悪い。
それに心なしかいつもより鼻声になっている。
翠はきっと隠せていると思ってるだろうけどうちには分かる。
ー試合中もいつもより走れてない。
体調が悪いのにあそこまで動けるのはすごいと思うけど明らかに辛そうだ。
けれど途中から点差が離れてきたのでスタートメンバーは余力を残しながら終わることが出来た。
試合後翠を見ると明らかに辛そうだった。
声をかけようとした所で他のメンバーに呼ばれたのでうちは呼ばれたメンバーの方に行った。
ーそれが間違いだったのかもしてない。
みんなで弁当を食べてる時翠がいなかった。
きっとまた1人で辛そうにしているんだ
うちが気づかなきゃいけなかった。
誰よりも翠を見てたのに。
ー午後の練習の合図がした。
◇
午後のメニューは中学生がいたから楽でほっとした。
しかし最後の5対5で事件は起きた。
翠と一緒のチームになってしまった。
世良と番号の確認をしていたようで世良は一緒のチームではなかった。
ー世良とはいっつも話してるのに……
不安が少し心に残った。
それから何となく話しかけられずポジションの確認だけした。
すると翠が先輩に一言何か話して体育館から出ていってしまった。
ー話すなら今だ。
うちも同じ先輩に一言かけると翠の後を追いかけた。
◇
やっとの事で追いついて翠の手を掴むと翠は驚いた顔で「咲樹もお手洗い?」とだけ聞いてきた。
ー明らかに辛そうじゃん……
うちは体調を聞く前に「なんで昼いなかったの」
とだけ尋ねた。
翠は家に帰ったって言ってるけどおそらく嘘だろう。
今日の朝ちゃんと世良とご飯食べる約束してたもんね。
うちは早速本題に入った。
「体調悪いんでしょ?」
うちがそう聞くと食い気味にその言葉を拒んだ。
そんなわけないのだ。
そんな息切らして、顔色悪くして、いつもより覇気がなくて。
それでも翠は体調が悪いからかいつもよりうちを突き放そうとする。
「用ないなら体育館戻ってて」
そう言われた瞬間涙腺が崩壊した。
泣きたかったわけじゃない。
けど涙が勝手に出てきてしまう。
うちは言葉を絞り出した。
「うちなんか翠の気に障るようなこと言っちゃった?」
するとまた食い気味に翠が鬼の形相で「違う!」
と叫んでいた。
けれどもう頭が真っ白で言葉の制御が出来なくて、うちはひたすら翠に質問攻めをした。
言ってる間にも翠の体調が悪くなってるのが分かった。分かっていたけど止まらなかった。翠とこれからも距離を取られるのがやだったから必死に言葉を紡いだ。
そして最後になんでうちを避けるのか。
そう質問した時翠の大声によって遮られた。
「咲樹のこと好きだから!!!!」
しばらくの間沈黙が流れた。
うちは頭の整理というより翠から発せられた言葉の理解ができなかった。
短い沈黙の後翠の体が前のめりに倒れてきた。
うちは咄嗟に抱き寄せると翠の体はめちゃくちゃ熱くなっていた。
「翠!?聞こえる!?」
うちは翠に向かって叫んだ。
◇
その後すぐに先生方が集まってきて翠はひとまず保健室に運ばれた。
うちは未だに頭の整理がついてなくて、その後どうやってうちに帰ったのかも分からない。
けれど家に帰ってやっと熱が冷めた気がする。
…………。???????
うちには到底、今日の出来事が現実だという実感は湧かなかった。
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