第6話 夏の始まりー咲樹sideー

「まーたあの2人1対1やってる。」


私の友達穂乃果(ほのか)がそう言った。


「あの2人って確か小学生の時からライバルだったんだよね?それで高校は仲間ってすごいわ」


穂乃果が続けてそう言った。


「だからってなんか距離が近過ぎやしませんかね〜…」


私がぼそっとそう言うと


「うーん。まあ確かにいつも一緒にいるよね」


と穂乃果も2人の1対1を眺めながらそう言っていた。


翠があんなに楽しそうな顔をする時は世良がいつも一緒にいる気がする。


翠が笑顔なのはいい事だけど、何故か胸がモヤモヤする。


何でかわかんないけどなんか嫌だ


私はそう穂乃果にそれとなく言ってみた。


すると穂乃果は


「嫉妬じゃない?ほら、一時咲樹も時たま話すじゃない。だけど、世良の方が話してるし明らかに世良の方が長い間一緒にいるから、翠も楽に話せるんでしょ。」


とそう言った


私は嫉妬って何?と尋ねた


すると穂乃果はこう答えた。


「ん〜まあ嫉妬って好きな人とか気になる人にしちゃうものだけど…」


穂乃果は考えながらそう言った。


私は翠について考えた。


1番最初にしっかり話したのは腰痛で動けなくなっていた翠を見つけた時だ。


翠は自分の感情をあまり表に出さない。


だから翠のことをよく観察していた。


観察していくと時々腰痛に顔を歪めていたから心配だった。


けれど試合が終わって数日経ってくると翠と話す機会が結構増えてきた。


好きな音楽、ゲーム共通の話題が多くて意外にも翠はちょっと抜けてて馬鹿っぽい所があることに気がついた。


ーけどそんな意外な一面は私だけが知っていればいい。


そう思ってたのに。


世良と一緒にいると私が見たことないような笑顔をするからずっとモヤモヤしっぱなしだ。


ーこの気持ちはなんなんだろうか。


そう思っていると練習開始の合図がした。




♢

練習が終わると速攻終礼までの準備を終わらせて翠の所に向かった。


向かう途中穂乃果に「早っ!珍しいじゃん」


と驚いた顔で私にそう言ったので、


「ちょっと翠と話してくる!!」


とだけ伝えると穂乃果がいってらっしゃいと言って送り出してくれたので私は走って翠の元へ駆け寄った。




翠の元へ駆け寄ると翠は驚いたように私を見つめて「珍しいね」と言ってきた。


私は自慢げに「そうでしょ?」と言った後しばらく翠の隣で心の準備をしてからこう言った。


「翠、うちとも1対1してよ。」


翠は今度こそ目を見開いて物珍しそうにこっちを見ていた。


私は照れくさくなって翠の上に座って自分の顔が見えないようにしながら、やけくそで


「うちもお前と1対1したい!」と言うと、翠は少し戸惑いながらだったけど、


「じゃあ早く体育館来るんだよ?」とそう言った。


そう約束をしたところで終礼の合図がしたので私たちはみんなの元へ向かった。


私は向かっている途中顔が少し熱くなっていることに気づいたと共に自分の気持ちにも整理がついた。



ー私は翠のことが好きなんだ、と。


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