第5話 夏の始まり
無事に1学期を終え、夏休みが始まった。
夏休みと言ってもほとんど部活だけど、毎日咲樹に会えるから私としては役得なのかもしれない。
ただ、浮かれている余裕は無い。
夏休みが終わりを迎える頃私たちは大会が始まる。
それまでに今に自分に足りない物を補っていかなければいけない。
ただ今から気を張る必要はない。
私は今日から始まる夏休みの練習に期待を馳せながら体育館に向かっていた。
ー私は自分の中で夏休み中の課題を考えた。
部活のことはもちろん言うまでもない。
肝心なことは咲樹の事だ。
いくら意識されていないと分かっていても、動かないと話しにならない。
だから自分に 、ノルマを作ったのだ。
ー毎日咲樹と話すこと。
それがこの夏のノルマだ。
一見すると簡単に思えるかもしれない。
けれど私にはすごく難しいノルマなのだ。
咲樹とは前の腰の1件が会ってからちょくちょく話すようにはなっていた。
けれど咲樹は特に仲の良い部活の仲間がいる。
私も基本的には世良と一緒にいるから、あんまり咲樹と話す機会はない。
世良は小学生の頃から知っているので、特に何もしなくても最初から一緒に行動を共にしていた。
と言っても私たち1年は基本的にみんな仲が良いので、いつも一緒にいる人は違ったりすることもある。
だからこの夏で少しでも良いから、咲樹と距離を縮めたいなと思っていたのだ。
そう悶々と考えていた所で体育館に到着した。
♢
「翠珍しく早いじゃん。」
バッシュを結んでいると、世良が私にそう言った。
「今日は早く起きれたから。」
私はそう答えた。
周りを見ると次々とみんな準備をしている。
咲樹の姿も見えた。
私はバッシュを結び終わると、世良に1対1を申し込んだ。
世良は、「朝からやんの〜?汗だくなっちゃうよ〜」
と言っていたけどなんだかんだ一緒にやってくれる。
世良も根っからのバスケバカなのだ。
咲樹のことは好きだと言っているけど違う意味で言うなら世良の事も好きだ。
今までライバルだったけどこうして仲間にいるほど心強いことはない。
そして基本的にバスケに対する価値観が一緒だからバスケに関する話は全部世良にする。
世良は凄く面倒見が良くて周りからお母さんと呼ばれてしまうくらいだ。
そんなこんなで準備が終わった私と世良は1対1を始めた。
♢
「だあ〜!!!また負けた〜!!!」
そう言ったのは世良だった。
「まだまだだな〜世良〜?」
私は煽るようにそう言った。
と言っても勝因はたまたま私のロングシュートが当たっていたからだけど。
「明日は絶対勝つ!!!!!」
世良が私にそう言ってきたので
「明日も私が勝っちゃうよ〜?」
と意地悪そうに言うと、世良はすごくムキになっていた。
基本的に私も世良も負けず嫌いだから勝負事になると本気になってしまう。
でも私が勝手に申し込んだ1対1を本気でやってくれる所も含めて世良が好きだ。
一緒の仲間になれて良かったなとも思う。
ー1対1が終わったところで、練習開始の合図がした。
♢
練習が終了し、今は個々で片付けをしている。
私は準備を終え、終礼のためにみんなの準備が終わるのを椅子に座って待っていた。
今日のプレーなど1人反省会を行っていると、私の隣に誰かが腰をかけた。
ふと横を見ると隣にいたのは咲樹だった。
「咲樹今日は片付け早いね。」
私はそう言った。
いつも咲樹は片付けが遅く基本的には最後である。
他のメンバーとふざけているからだ。
「たまにはうちも早いんだよーだっ!」
私に自慢げにそう言った。
私は顔には出さないけれど、咲樹が私の隣に来てくれて内心めちゃくちゃ嬉しかった。
私は、そっかとだけ返して遠くの方を見つめていた。
すると咲樹が「明日うちとも1対1してよ。」
とそう言った。
私は驚いて
「私と?咲樹どしたん珍しい…」
とだけ言った。
そう言うと咲樹は立ち上がって私の上に乗っかって来ると「うるさいっ!!!」と言って
「いいじゃん!うちもお前と1対1したい!」
とそう言った。
私はなんだか嬉しくなって
「じゃあ早く来てよ?」
とそう言った。
咲樹は私の上に座ったまま「りょーかいっ!」
と返事をした。
すると終礼の合図がしたので私たちはみんなの元へ向かった。
向かっている途中私は
ー今日のノルマ達成だ…!と心の中で喜んだ。
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