第2話 君との出会い

♢

放課後の練習時間はだいたい16:00~19:00くらいだ。

大会前は短い時もあるけど、基本的には同じ時間で練習をしている。


辛い練習も多いけど運動部じゃ当たり前だと思う。


部活が終わり私は、自転車通学なので電車通学組と別れて駐輪場へ向かった。


自転車の前まで着き、1日見れなかった携帯の通知を確認していると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。


私を呼んだのは……


同じ部活の同級生である咲樹(さき)だ。


咲樹は一言で言うととにかく明るい。

チームのムードメーカー的な存在だし、いつも元気で誰にでも話しかけるタイプだ。


そんな咲樹に向かって私は


「あれ?咲樹なんで駐輪場来たの?」


と疑問に思いながらそう返した。


咲樹は電車通学なので駐輪場にいるのはおかしいからだ。


すると咲樹は笑顔でこう答えた。


「ちょっとこの音楽聴いて欲しくて〜!!」


そう言って私の元に駆け寄ってきた。


「いいよ。じゃあ駅まで歩きながら聴こっか」


そう答えて私たちは歩き出した。



♢

学校から駅までは徒歩15分ほどかかり、私も家が駅近なこともあって、基本的には部活のみんなと一緒に帰っている。


「んでこの音楽なんだけど……」


咲樹がそう言って音楽を流し始めた。


私と咲樹の共通の趣味はいくつかある。


1つは音楽だ。

たまたま同じーアーティストを聞いていた時に気づいたのだ。


そして2つ目はゲームだ。

これは部活に入った時には既にお互い同じゲームをやっていたことに気づき今もゲームの話はよくする。


音楽が聴き終わり私はその感想を伝えた。


「やっぱ私と咲樹は音楽の好きなジャンル一緒だよね。これとか絶対咲樹好きでしょ?」


そう言って私が別の音楽を流した。


その音楽を聴き終わった咲樹がまた感想を言った。


「超好き!!!!翠めっちゃセンスいいじゃーん!」


咲樹が笑顔でそう言った。


そしてちょうど分かれ道に差し掛かったところで私たちは手を振りながら別れた。

.

.

.

「やっぱ意識はして貰えてないよなぁ〜……」


私は1人でぼそっと呟いた。


ーそう。


私は咲樹のことが好きなのだ。


この事は友達の優里にも未だに言えていない。


私は咲樹が私に伝えてくれた褒め言葉を頭の中で反芻させながら家に帰った。




♢

私は特に同性が元々好きだというわけじゃなかった。

そもそもあまり人を好きになるタイプでもないので、実質中学3年生まで恋愛なんて縁のない存在でもあったのだ。


それでも私が人を好きになったこと。


ましてや同性を好きになったことは自分でももちろんびっくりしているし、当然何回も諦めようとしたのだ。


けれど今も好きだと言っているという事は諦めきれなかったということである。



ー私が咲樹に堕ちる約1ヶ月半前の話。


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