第10話 本日の戦利品

「ただいまデシィ!」

「ただいま・・・。」

「おけぇり。いきなり消えたかと思ったら、いきなり現れやがって・・・。」


茶の間でブラックコーヒーを飲んでいた淳は不満げな顔をしながら、突然、茶の間に姿を現したクラウドと美夜を見た。


「どこ行ってたんだよ!?」

「天界DAISO(ダイソー)デシよぉ~!」

「天界DAISO?」

「そうデシよぉ!いっぱいお買い物したデシね!」

「なぁんだ、百均か・・・。どうせ、大したことねぇんだろ!」


淳は呆れながら桜柄のマグカップでブラックコーヒーを飲んだ。


「そんなことないよ!天界DAISOってすごかったよ!淳も行けばわかるよ♪」

「姉ちゃん、はしゃぐなよ。そんなにすごかったの?」

「これ見て!これ見て!全部、100円だよ♪しかも消費税もないの!」

「ふぅ~ん。」


美夜は淳に[天界KALDI]と黄色いロゴの入った青い紙袋を見せた。


「なんか、良い感じの紙袋だな。ちょっと、見せろよ!」

「うんうん!見て見て!」

「どらどら・・・。」


紙袋の中には美夜が一生懸命選んだ明日のお昼ご飯の材料が入っていた。


「俺にはよく分からん!でも、これがパスタの材料で品質が良いってことだけはわかる!」

「淳にもわかるでしょ?これ、明日のお昼ご飯の材料だよ!明日のお昼ご飯は豪勢だよ♪」

「へいへい・・・。そっちのクラウドが持っている紙袋は何だよ?」


クラウドは淳にニマニマした笑顔を向けて、[天界DAISO]とロゴの入った紙袋をサッと見せると、すぐに後ろへ隠してしまった。


「なんだよ、クラウド!もったいつけるなよ!」

「しょうがないデシねぇ。それじゃあ、クラウドの居候グッズだけ見せてあげるデシ!」

「居候グッズだけ・・・って他にもあるのかよ?」

「あるデシよぉ~!でも、アツシには絶対に見せないデシ!」

「別にいいよ!どうせ、なんかあるんだろ?それより、居候グッズ見せろよ!」

「いいデシよぉ~♪」


クラウドが居候グッズの入った紙袋を広げると淳は驚きの声を出した!


「すげぇ~!これ、みんな百均で買ってきたのか?」

「そうデシよぉ~♪色々、買い込んできたデシ!好きなだけ見ていいデシよぉ~♪」

「ちょっと待て!麦茶、持ってくる。落ち着いて見ないとビビりそうだぜ!」

「その方が良いデシ!冷たい麦茶を飲んで、冷静になってから見るデシ!」

「待ってろ!麦茶、飲んでくる!」


淳はキッチンへ行って、冷蔵庫を開けて、美夜が毎日用意している冷たい麦茶をコップに注ぐと一気飲みをした。


「よし!準備万端!クラウド!見せろ!」

「全然OKデシよぉ~♪」


クラウドの居候グッズを一つ一つ丁寧に淳は見始めた。


「うっひょぉぉぉおおお!!!たくさんあるなぁ~!このピンクのクマちゃん柄のパジャマは何だ?」

「クラウドのパジャマデシ!クラウド、ピンク色とクマちゃん柄が大好きデシ!」

「ふぅ~ん、あっそう・・・。俺はてっきり、姉ちゃんのパジャマかと思ったよ。」

「居候グッズはいっぱいあるデシ!どんどん、見るデシね!ワックスは自分用に買ってきたデシ!」

「うん???なに、ワックスのことをわざわざ言ってんだ?」

「アツシはドケチデシ!どうせ、クラウドにワックス貸してくれないデシ!」

「当り前じゃねぇかよ!誰がクラウドなんかに俺様のワックスを使わせるかよ!オーガニックなんだぞ!」

「いいデシもん!ちゃんと買ってきたデシよぉ~!」

「それにしても、いいよなぁ・・・。こんなにすげぇもんが100円なんだろ?しかも消費税ナシ!俺も天界DAISOに行きたかったなぁ。」


クラウドの居候グッズを見ながら、淳は残念そうに言った。


「来週、ソレイユ・ドールさんのコンサートに行けるじゃない。淳、気にしないの。」

「へいへい・・・。」


美夜になだめられたが、淳は不服そうに返事をした。

茶の間でクラウドは淳に居候グッズを見せびらかしながら、商品に付いていたタグを外し始めた。


「今晩のお夕飯は何が食べたい?」

「クラウド、お焼きそばが食べたいデシ!!!」

「お焼きそば?ああ・・・、焼きそばね!」

「俺も焼きそばが良い!もう、買い物に行くのか?」

「結構、良い時間だからね。散歩がてらに行ってくる。」

「でもさぁ、さっき見せてくれた材料で夕飯作った方が早くね?」

「あれは明日のお昼ご飯の材料!!!今日は別にお夕飯を作るの!」

「デシシシシシシシシ!(注:クラウドの笑い声)さすが、みよるシャンデシ!一度決めたら絶対に譲らないデシ!調査ファイル通りデシ!」


天界KALDIで買ってきたイタリア食材を断固として明日のお昼ご飯用だと言い張る美夜の頑固さぶりを目の前にして、クラウドは嬉しそうにニコニコと微笑んでいた。


「今日は念願のみよるシャンのお焼きそばが食べられるデシね!クラウドがお野菜たっぷりのにら玉スープを作るデシ!みよるシャン!お買い物に行こうデシ!」

「うん!行こう!」

「俺はしばらく、クラウドが買ってきたもん見てる!とっとと、二人で行ってこい!」

「は~い!行ってきま~す!」

「アツシ!姑息な真似するんじゃないデシよ!」

「そんなことするわけねぇだろ!面白れぇから、じっくり見たいの!早く、買い物に行け!」

「みよるシャン、二人きりで行くデシね!アツシ!本当に姑息な真似するんじゃないデシよ!」

「そんなことしねぇよ!しつけぇんだよ、お前は!」

「クラウドは慎重なんデシ!今度は人間界のスーパーデシねぇ~!楽しみデシ!みよるシャン、準備していくデシよぉ。」

「うん!」


クラウドと美夜は玄関で靴を履き始めた。アツシは玄関まで出て、二人を見送ると茶の間に戻って、「おおっ!!」「うひょぉ~!!」と叫びながらクラウドの居候グッズを見ていた。

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神の旋律 千晶茜 @mion_hase

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