第8話 天界DAISOへようこそ
[天界DAISOへようこそ!]っと書かれた文字がピカピカと点滅している大きな看板の前に美夜とクラウドは立っていた。
「みよるシャン!天界DAISO(ダイソー)についたデシよ!」
いきなり天界へ連れてこられて、ビックリしている美夜にクラウドは笑顔で言った。
「天界DAISOについた???」
美夜は都心部の駅ナカにいるような風景を見回し、[天界DAISOへようこそ!]と書かれた大きな看板に気づいた。看板の文字がピカピカと7色に点滅していた。
「天界DAISO???もしかして、100円ショップのDAISO???」
「はいデシ!天界DAISO本店デシよ!天界の100円ショップデシ!」
「!?」
「みよるシャン・・・、大丈夫デシか?契約書通り、みよるシャンの傍にずっといることになっているデシ。だから、みよるシャンを天界DAISOに連れてきたデシ!」
「そうだよね・・・。確かに契約書に書いてあった。」
「早速、天界DAISOでお買い物するデシね!クラウドの居候グッズを買うデシ!」
「でも・・・。」
「みよるシャン!全然、心配ないデシ!ちょっと中に入ってみるデシ!」
「うん・・・。」
看板の前で戸惑っている美夜の背中をクラウドは押した。
美夜は戸惑いながらも、天界DAISOの大きなガラス製の自動ドアの前に近づき始めると心がドキドキワクワクと高鳴り始めた。店内をサッと見回して、すぐに太い黄色の文字で[天界KALDI]と書かれた青い看板を見つけた。
「天界KALDIもあるの???」
「当り前デシ!天界DAISOの本店デシよ!天界KALDIぐらいあるデシ!」
「ちょっと、見てきていい?」
クラウドの返事を待たずに、美夜は嬉しそうに天界KALDIの看板へ向かって一直線に歩き出した。美夜の目についたのはイタリア食材のコーナーだった。
「え~~~!!!これ、生パスタだ!それに缶詰がギッシリ並んで知る!ジュノベーゼの瓶詰がこんなにたくさんある!!!これ、ホールトマトとカットトマトじゃない!?」
「みよるシャンはパスタ料理が大好きデシね!調査ファイル通りデシ!」
「クラウド!ちょっと、他も見させてね!」
美夜は嬉しそうにイタリア食材のコーナーを見回り始めた。大興奮している美夜の後ろをクラウドは嬉しそうについて回った。天界KALDIのイタリア食材のコーナーには木製の棚に数十種類のパスタや生パスタ、各産地のホールトマト缶詰、ジュノベーゼの瓶詰、各種スパイス類など、目が回るような種類の食材が陳列されていた。
「こっちには色んなチーズがある!うわぁ!これ、各国から取り寄せたチーズなの?」
「そうデシよ!たくさん種類があるデシ!」
「きゃぁぁぁあああ!テンションMAX!!!もう少し見てもいい?」
大興奮している美夜は各国のチーズがある冷蔵コーナーへ行き、品物を手に取って、眺めていた。チーズにはきちんと品名と原材料、産地が書かれていた。産地を見てみると美夜の知らない名前が書いてあった。
「あの・・・、みよるシャン・・・。」
クラウドはゴーダチーズの産地を確認している美夜の足元を見ながら、恥ずかしそうに言った。
「クラウド、焦っていたデシ・・・。みよるシャンとクラウド、裸足デシ!」
「あっ!本当だ・・・。」
「みよるシャン。天界KALDIは帰りに寄ればいいデシ!」
「うん!そうだよね!」
「クラウド、電子マネーカードを持っているデシ。それで、お買い物するデシね!チャージしておいたお金が余ったら、帰りに天界KALDIでお買い物して帰るデシ!」
「うん!それじゃあ、帰りに天界KALDIに寄ってね!」
「もちろんデシ!それじゃあ、レディスフロアへ行くデシね!」
「うん!」
クラウドに案内されて、美夜は天界DAISOのガラス張りのエスカレーターに乗って、レディスフロアへ行った。
シューズコーナーへ到着するとクラウドは早速、美夜を春夏物のシューズが置いてあるコーナーへ連れて行った。
「どの靴が良いデシか?」
「えっと・・・、どれがいいかな?いっぱいあり過ぎて、選べないなぁ・・・。」
シューズコーナーには様々な靴がアクリル製の棚に所狭しと陳列されていた。
美夜はサンダルが置かれているコーナーを見つけて、その前でずっと、サンダルを眺めていた。
「素敵なサンダルがいっぱい!この中から選ぶんだよね?どれもとっても素敵♪」
素敵なサンダルを眺めながら、美夜は突然ハッとした顔になった。
「ごめんなさい。クラウド・・・。突然、天界DAISOに来たから、私、お金持っていないよ・・・。」
「心配ご無用デシね!さっきも言ったデシ!クラウドが電子マネーカードを持ってきたデシ!みよるシャンの好きな物を買ってあげるデシね!好きな靴を買うデシよ!」
「うわぁ!ありがとう!いきなり天界DAISOに来たから、混乱しちゃっていた(笑)。それじゃあ、遠慮なく、ご厄介になります!」
「いえいえ、とんでもないデシ!」
美夜はクラウドに深々と頭を下げてお礼を言うと、再び、サンダルのコーナーを見て回っていた。
100円ショップだというのにあまりにもたくさんの靴が売っていた。
サンダルのコーナーだけでも、何十種類ものサンダルが並んでいた。
可愛い花が飾られた物、落ち着いたシンプルなデザインの物、黒や茶色の皮を使った物などが置かれていた。棚には一つ一つの商品にポップが貼られており、使用している素材とプロデュースしたデザイナーの名前が書かれていた。[天界DAISOイチオシ!]と大きく赤い文字で書かれたポップなども貼られていた。見ているだけで一日が終わるのではないかと思う程のサンダルが陳列されていた。美夜はゆっくりとサンダルを眺めていたが、どれを選んでいいのかさっぱりわからないし、嬉しさのあまり、かなり興奮していて、自分がサンダルを見つめているのか、何を見つめているのかさっぱりわからなくなっている様子だった。
「みよるシャン、このサンダルはどうデシか?」
クラウドは何十種類ものサンダルの中から迷わず、可愛らしい赤い薔薇の花が施され、靴底がコルク素材で出来ており、皮製のリボンを足首に結んで使うサンダルを美夜に見せた。
「素敵!でも・・・、こんな素敵なサンダルなんて、似合わないよ・・・。」
「そんなことないデシ!一度履いてみて、鏡で見るデシ!」
「う、うん・・・。」
美夜はクラウドに見せられたサンダルを少し躊躇しながら履いた。サンダルはピタッと吸い付くように美夜の足に収まった。店内の大きな鏡の前に立つと以外にも今の服装とサンダルがぴったり合っているので、美夜はそのサンダルを一発で気に入ってしまった。
「そのサンダルはソレドちゃんがプロデュースしたデシ!ポップに書いてあったデシね!」
クラウドはサンダルを履いた美夜の姿を満足気に見ていた。
「やっぱり、みよるシャンによく似合うデシ!」
ターコイズ色のポロシャツを着て、[天界DAISO]と虹色のロゴが書かれた黒地のエプロンを羽織ったシューズコーナーの店員が美夜とクラウドの側に寄ってきた。
「とっても、よくお似合いですよ!本日はソレイユ・ドールがプロデュースしたブランドのソレイユ・ドールモデルのシューズを特別販売しているのですよ。」
店員はサンダルを履いている美夜の姿を見ながら、ニコニコとしていた。
「お客様!せっかくですから、他のソレイユ・ドールモデルのシューズも履いてみませんか?」
「え・・・、でも・・・。」
「是非、ソレイユ・ドールモデルのシューズを履いてみてください!素敵なシューズがたくさんございますよ!」
シューズコーナーの店員は熱心に美夜を説得した。
「みよるシャン、せっかく店員さんがお勧めしてくれているデシ!履いてみるデシ!」
「ちょっとだけ・・・、履くだけでもいいですか?」
「はい!全く構いませんよ!では、こちらのコーナーにご案内します。」
店員に案内されて美夜とクラウドは[Produce By Soleil]と白い文字で書かれたポップが置かれているコーナーへ行った。
「お客様。こちらなどはいかがでしょうか?」
「あっ!はい・・・。」
「何も気になさらないでくださいね。わたくしはただ単にお客様がソレイユ・ドールモデルのシューズを履いているお姿を見たいだけですので、遠慮なくお試しくださいね。」
「わかりました!それじゃあ、色々、お試しさせていただきます!!!」
美夜は店員が勧めてくるソレイユ・ドールモデルのシューズを履いて、大きな鏡を見ていた。
どのシューズも美夜の足に吸い付くようにピタッと収まった。嬉しそうにシューズを履いて鏡を見ている美夜の姿をクラウドは満足気に見ていた。
「私、やっぱり、クラウドが選んでくれたサンダルがいいな・・・。」
「みよるシャン!遠慮することないデシ!店員さんがお勧めしてくれた靴をみんな買うデシよ!」
「でも・・・、お金が・・・。」
「電子マネーならいっぱいチャージしてあるデシ!ここは100円ショップデシ!全部、100円デシよ!遠慮しちゃダメデシ!」
「ありがとう・・・。それじゃあ、よろしくお願いします・・・。」
美夜は申し訳なさそうにクラウドに頭を下げた。
「みよるシャンは堂々としてれば良いんデシ!店員さん、その靴、全部買うデシ!お会計をお願いしますでございますデシ!」
「はい!かしこまりました!ありがとうございます!」
クラウドは紺色のスーツの上着からダークブラウンの皮で出来たパスケースを取り出し、中から虹色のデザインが施された電子マネーカードを出すと店員に渡した。店員は自分たちが勧めたソレイユ・ドールモデルのシューズを持って、会計に行ってしまった。
「クラウド・・・。あの・・・。本当にありがとう!すっごく、嬉しい!」
「みよるシャンは何も気にすることないデシね!今、お会計しているデシから、待ってるデシ!」
天界DAISOとロゴの書かれた薄茶色の再生紙で出来た紙袋を持った店員と何やら大きくて透明なアクリルケースを持っている別の店員がクラウドと美夜のもとへ来た。
「お待たせいたしました!こちらが商品です。それから、シューズをご購入いただいたお客様にちょっとしたおまけをご用意させていただいております。この中からお好きな物を選んでください。」
店員が大きくて透明なアクリルケースをクラウドと美夜の前に差し出した。
ケースの中には天界DAISOのヘアケアグッズ、スキンケアグッズ、ボディケアグッズ、メイクグッズが入っていた。美夜は少し躊躇しながらボディケアグッズを手に取った。メロンソーダ色の丸いケースの蓋の上には[100%アロエジェル]と書かれていた。
「これ・・・、おまけなんですか???」
「はい!ちょっとしたおまけでございます。お好きな物を選んでくださいね。それから、男性のお客様にはこちらをお履きになって、店内を周ってくださいね。」
店員は品のいい形をしたネイビー色のサンダルをクラウドの前に差し出した。
裸足で美夜と一緒にいたクラウドは嬉しそうにサンダルを履いた。
美夜は店員に差し出された『ちょっとしたおまけ』の量の多さにびっくりしていた。
「みよるシャンはちょっぴりお洒落をした方が可愛いデシから、この『すっぴんさんメイクセット』が良いデシよ!」
クラウドは『ちょっとしたおまけ』の中から迷わず、『すっぴんさんメイクセット』を選んで、美夜に見せた。クラウドが選んだ『すっぴんさんメイクセット』はピンク系の色を中心にクッキーやドーナツ、チョコレートなどの茶系の色のお菓子柄が施されたメイクセットになっていた。
「可愛い!それじゃあ、これにします!」
「ありがとうございます!それではおまけの用意も致しますので、もう少々、お待ちください。」
クラウドは店員から渡された美夜の靴が入った紙袋を持って、フカフカの赤い椅子の上に座っていた。
美夜もその隣でワクワクしながら、『ちょっとしたおまけ』が届くのを待っていた。
「天界DAISOってすっごくサービスが良いんだね!ネットショップでお買い物したりするとおまけをつけてくれるショップとかあるけど、天界DAISOのおまけはすごいね!」
「当り前デシ!天界DAISOはサービス満点デシよ!おまけが届いたら、今度はメンズフロアに行くデシね!クラウドの居候グッズを買わないといけないデシ!」
「うん!待っている!」
二人はウキウキわくわくしながら、店員が用意してくれた『ちょっとしたおまけ』の『すっぴんさんメイクセット』が届くのを待っていた。
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