第6話 ポーション作成

回復草は根から太い茎がのび、茎から細い茎に枝分かれし、そこにローリエのような形状の葉がついている。


僕の作り方だと葉5枚でDランクポーション1つ分になる。一株でだいたい50枚だから十本分。

ネットを見ると2〜3枚でDランクをつくる人もいるけど、たぶん飲めないタイプのポーションだろう。


表面的に見えている怪我ならポーションをかけても飲んでも効果は変わらないけど、内臓や骨折、ひびなど見えない怪我は飲むタイプじゃないと効かない。


かけるタイプ飲むタイプは僕が勝手に言っているだけで、低ランク高ランク関係なしに飲むらしい。

僕がかけるタイプとして作るポーションは罰ゲームでも飲めないほど苦くえぐ味が強い。

飲めるタイプは独特の風味のお茶と思うくらい。


葉を見て状態の良いものを選ぶ。

根がついた株ごとは高いが、株ごと買うのには理由がある。

根を魔力水につけ、 魔力と水分を吸わせることで葉の状態がよくなったり、悪くなるまでの時間が延びる。


回復草や魔力水など素材系は鑑定してもランクが表示されない。なので目で見て確かめるしかない。

これは海外に実験した人がいて同じ手順で作成しても効果に差が出たと研修結果としてまとめられている。

否定する人もいるけど、僕の体感でもそう思う。


魔石を水と混ぜると魔力水ができる。

水道水でもできるが、蒸留水、精製水、RO水が品質が安定してるのでオススメと言われているので、それに習ってネットでまとめ買いした精製水を使っている。


ハロゲンランプ式サイフォンを使用する。

魔石をトングで掴み、光に当てて熱を加える。

熱を加えることで衝撃に弱くなり砕くことができるようになる。


砕かれた魔石は性質が不安定になり水などに溶け込みやすくなる。


乳鉢に入れて粉状になるまで優しく時間をかけて潰していく。平日は1日で1つか2つの魔石を処理できる。


Bランクのポーションを狙うからFランクの魔石をメインに使って作る。Gランクの魔石も半分ほど混ぜる。

1回分を薬包紙に包んで保存する。


次の日に回復草に取り掛かる。

回復草の葉をカッターマットの上に置き、デザインナイフで葉脈に沿って切っていく。葉脈のギリギリを慎重に切って葉身と分離する。


1枚ずつ丁寧に分けていく。葉脈ごとポーションにするとえぐ味がでると気づいたので飲みやすいようにこうしている。ギリギリを切るのは葉脈に近い所の方が回復量が多いポーションが作れるから。葉の量を増やせば補えるけど、材料が勿体ないので時間をかけて処理していく。


葉脈と分けた葉身を更に2ミリ角に刻んでいく。

粉末にすると回復量が上がる代わりにかなり苦くなる。

Ztuberが公開したレシピでミキサーを使って短時間で低コストでEランクポーションを作成して一時話題になった。ただデバフも付いていて使いにくいが圧倒的にタイパコスパが良いので低ランク帯にはデバフ付きポーションの割合が多い。


2日かけて5枚の葉の処理を終える。



下準備を終えついにポーションの作成にかかる。


フラスコに精製水を150ml入れ、温度計を挿し込みサイフォン台にセットし加熱する。

横でネルフィルターをセットしたロートを立てて、その中に準備した魔石と回復草をいれる。


温度が上がり80℃になった所で、温度が上がりすぎないようにサイフォンを熱源からずらしてロートを挿す。


低温で抽出するのは味のためだ。

高温の方が回復成分の抽出量が多くなるけど、粉末化と同様に苦くなる。


ゆっくりとお湯が上がってきて、上がりきったら木べらで軽く撹拌して1分待つ。


サイフォンを完全に台から外し、再度撹拌するとロートからフラスコにポーション液が落ちる。


鑑定。

低級回復ポーション

ランクB

効果 85の体力回復

期限 186日

追加 なし


冷めたら100mlのペットボトルに移し替え再度鑑定をかけ確かめる。


よし出来た。




学校から帰ってからの息子がどこかうわの空だった。

部屋にこもりゴリゴリと音が鳴っているからポーション作成のために魔石を潰しているのだろう。


息子のポーションのおかげで私は元気に生活できている。


高校生になり、ポーションを販売するようになって素材も自分で購入して、お小遣いまでも稼ぐまでになっている。


学業の片手間で良くやっている。


将来的に錬金術師だけで生活できるとは限らない。なのでとりあえず大学には行きなさいと言っている。息子もそのつもりだったので夫と一安心した。


私のためにポーションを作ってくれていて嬉しいが息子の人生を縛る気はない。


高校生なんだから部活動でもして彼女作ってデートしたりしてくれてもいいんだけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る