第4話 呼び出し

下校前、いきなり花川さんに話しかけられた。

「大浦くん、この後ちょっといい?」

え?あぁうん。


接点がなかったのにいきなり話しかけられるのってもしかして告白されるやつかな?花川さんは綺麗系の女子でクラスでも人気だと思う。


放課後、部活動が始める中。僕たちは中庭の花壇のレンガに並んで座っていた。


ここに来るまで。そして今も僕のドキドキは止まらない。


「大浦くん、いきなりごめんね」

全然だいじょうぶだよ。

「話っていうのはね……」


花川さんは黙ってしまった。僕まで緊張して喉が渇く。


「大浦くん、彼女いる?」

い、いないよ。

「好きな人は?」

と、とくに。

「よかった」


これはやっぱり告白される流れだ!



「大浦くんは錬金術師でポーション作ってるんだよね?」

え?あ、そうだけど……。

「大浦くんのポーション飲みやすいって聞こえて、それでポーション譲って欲しいんだけど……」 


あぁ、ポーションだったか。そうだよね。僕に告白してこないよね。逆に安心した。ポーションでよかった。ポーションと彼女や好きな人の関係は分からないけどと心で自分を慰めた。

ただ例えGランクでもタダで上げるわけにはいかない。素材料がかかっているし手間もかかっている。一人にタダで譲るとみんな一回はタダで上げないといけない状況になってしまうかも知れない。


花川さん。ごめん。タダじゃあげられないんだ。

「うん。タダじゃ無理って分かってる。だからね。交換してほしいんだ。」

交換?

「私の処女と大浦くんのポーション交換してくれないかな」




私自身が凄く突拍子もないことを言おうとしているのはわかっている。


高ランクのポーションの価値は知っている。


私と付き合うだけで割に合うと思うほど自惚れていない。


お金もない。


だから私は処女を。


回復術師は知り合いにいないし、高ランクのポーションが作れる錬金術師は大浦くんしか知らない。


ネットで募ればお金やポーションが手に入るかも知れないけど、騙されないかなどリスクがあり過ぎて怖くて無理だった。

あとできれば同年代がよかった。


大浦くんのことは詳しく知っているわけじゃないけど、いい人そうとだけ思う。横柄じゃないし。


もし断られても人に言い触らしたりしないだろう。


大浦くんを呼び出し、いざ言おうと思ったら不安が大きくなった。


私の処女にそこまで価値があるのかな。定期的にポーションをもらいたいけど、セックスだけで譲ってくれるかな。


自惚れていないと思っていたが自惚れていたのかも知れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る