第129話 色


俺が詠唱を始めて約15秒が経過したとき、空一面に突如として、あり得ない程の大量の剣が出現した。




………ソラツルギを使ったのか。


割と今回の爺は本気らしい。



そして俺は、黙々と詠唱を続ける。


すると…






ヒュヲォオオオオオン!!!!



突然空にダンプカーやトラック、その他重機が空に出現して、俺達に降り注ぐ。



だが、我らがエルフにそんなものが通用される訳もなく、普通に弓で全て撃ち落とされる。



…………矢をつがえる動作が速すぎて目で追えなかったんだけど、速すぎない?



そう心の中で愚痴りつつ、俺はまだまだ詠唱を続ける。






「狂ったように嘆いて、狂ったように叫んで、狂ったように踊り狂う」




約1分が経過した。



そして俺の詠唱も、約3分の1が終了したところである。



まだ終わるには程遠いが、このままいけば間に合うな。




そう思った瞬間だった。






ガラ…………ガラガラガラガラガラガラ!!!!



このビルが崩れ始めたのは。




………クソッ!!奴めこのビルの重要な柱を消して、このビルを倒壊させたか。




………不味いな。



そう思っていたのも束の間、俺はエルフにお姫様抱っこで、他のビルに連れて行かれる。





シュタ!ガラガラガラガラ!!




そして他のビルにに飛び乗った瞬間、その飛び乗ったビルも倒壊する。




…………冗談じゃねぇ、怖すぎる。




そう思いながら、俺は何とか目を瞑り、詠唱を続ける。




そしてこの悪夢の様なジェットコースターを楽しむこと1分15秒。




終わる。



「世界は暴虐に包まれて、希望は無いと塗りつぶされる。この先は無いと思い違い、絶望に浸され蝕まれる。ただそれでも希望を信じている。この救いのない心は、何も見えずとも信じている。この先道など無かろうとも、僕は最早止まらない。だからその盲目を信じて、この先を歩く…





………ゲームセットだ、クソ野郎。










…………そう、これは色魔法の詠唱だ。


ただ一点、あり得ない事を除けばな。




………そう、色魔法といえば、あり得ない程の短文詠唱が売りなのである。



何々の様な色を何々。



これが色魔法の基本である。


ただこの色魔法は、そんな常識をぶっ飛ばし、超長文詠唱として君臨している。



…………そう、この色は、本来の色魔法の7色に含まれない例外の色なのだ。




…………そしてこの長文詠唱の色は、全てに対して特攻を持っている。


詠唱さえ終われば勝ち確定。


意味わからないだろ?原作にすら無いんだぜ?




………まあ、これこそが、俺が色の試練で勝ち取った2色。




藍、そして…
















黒。




俺が詠唱を終わらすと、俺の周りから黒色の霧が出てくる。


そしてそれは、刀へと形を変えた。



無骨な日本刀。


ただこの刀の性能は、ただの日本刀ではない。




触れた魔法を即座に打ち消し、その魔術を放った奴のMPを、強制的に0にする…



クソチートだ。







そして俺はこの刀を、適当に振る。




するとこの空間は崩壊し始め、創造主エルゴーンは、光の粒子となって消え失せた。





…………やっぱりあのエルゴーンはダミーの方だったか。


そう、エルゴーンは自身と全く同じ見た目をしたダミーを創り出す事ができるのだ。


そしてそれを、他の一般人に紛れさせて生活させる。


そうして奴は、オーストラリアの魔王城に引きこもりながら、世間の情報を集めている。


まあ、本来のエルゴーンは非常にお喋りな為、話しかけてこないという点からも、奴がダミーの方であるのは明確だった訳だが。



…………まあ、今回現れたのは、勇者の情報の尻尾を何処かで掴み、誘き出して情報を集めるためにこんなダミーの使い方をしたのだろう。





…………疲れた。




そう思いながら俺は、黒魔法を使った代償として、異常なまでの気力を消耗したため、意識が遠くなる。



…………最終日がこれとか、俺そんなに前世で業積んでないと思うんだけどなぁ。




そう思いながら、俺は気絶したのだった。








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