第128話  あり得ない


別世界に入った。


意識がグルグルと回る感覚がする。


そして、その感覚に飲まれて15秒。


俺はさっきとはまるで違う景色に包まれていた。



夜の都会。


その4文字で全て伝わるであろうレベルで、異常なまでにキラキラした都会である。




……………そして俺達は、この都会の無数にあるビルのうちの1つの屋上に立っていた。


高いな。




俺はそう思いながら下を見ていた。




すると爺が肘打ちしてきた後に、こう呟いてきた。




「上を見ろ馬鹿弟子」



俺はすぐさま上を見る。





するとそこには…














あり得ない程の大きなマントをした女性が、当たり前のように空を飛んでいる。



そう、奴は…




創造主エルゴーン。




こいつの説明をするならば、スキル《別世界》を別次元の領域で使いこなしている天才。


あるいは…



序盤の敗因。





とプレイヤーから言われていた。




…………そう、彼女こそが、数多のプレイヤーに初ゲームオーバーを経験させた悪夢の象徴。



そして俺が、主人公と共に行動している理由である。





……………そう、何たって彼女は。


この別世界の中なら、《聖域》の弱体化を受けない…


クソ野郎だからだ。






…………っと、無駄な事を考えてる暇は、どうやらここからは無さそうだ。




俺はすぐさま構える。



すると爺が1言。



「3分でよいな?」


「ああ、任せろ」



こう言った後、爺は空に駆け出して行った。


そして俺はそれを見送りつつ、詠唱を開始する………前に。


エルフに頼み事をする。




「ランちゃん」


「…………何じゃ?」


「3分間…………俺の事…
















全力で守ってね」


「………意味は分からんが上等じゃ、任せろ」



うん、いい返事だ。



そして俺は、今度こそ詠唱を開始するのだった。






★★★★

side爺




ワシはとあるできのいい弟子を育てていた…



その名は無神天人。



そしてできの良すぎた奴は、一回ワシに勝利している。


単純な実力勝負で。





あり得ない話じゃ。


職業も持たぬガキが、ワシに勝利するなど、夢物語の次元を超えておる。


ただ、奴はそのあり得ない夢物語を現実に持ってきよった。


その、あり得ない魔法を持って…………な。






だからワシは、奴を呼んだ。


そのあり得ない魔法を使わせる為に。




………あと3分か。


それだけ稼げばいいのだったら、楽勝じゃ。




そしてワシは、奴と向かい合い、聞きたい事を聞いてみた。



「何故ここに来よったのじゃ?」


「…………」


「………答えぬか」



やっぱり、魔族との意思疎通など無意味か…



そう思ったワシは、とある魔法の詠唱をする。



「空覆い尽くすは我が刃。君貫くは我が刃。研ぎ澄まされし我が世界を以て蹂躙する」





………発動。


「ソラツルギ」






























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