第125話  お前バイトしてたの!?



………あの爆弾発言、もとい賭けに負けた宣言を、この部屋にぶちかましたエルフは、下を向きながら詳細を語る。



「………実はワシ、アルバイトしているのじゃ」


「本当に何で?」


「…………ここに勇者はおらんな?」


「当たり前だ」


「………………番人じゃろ?ワシ?」


「そうですね。アイネの様子はどうですか?」


「いつも通り一切動かん。ただただ幻想的に台座にぶっ刺さってるだけじゃ」


「………仕事は真面目にこなしてるじゃないですか。何でアルバイトを?」


「…………ゲーム」ボソッ





………………おいこいつ今何て言った?


………いやいやいや、聞き間違えだろ。


流石に…






…………一応な!!聞き間違えだとは思うが一応な!!



もう一回聞いてみよう。




「One more pleaseゥウウウウウウ!!!」


「………聖剣の間に引きこもってずっとゲームしてたら大統領と友達に怒られちゃって…………社会復帰のために仕事を…」


「ニートじゃねぇか!!」



俺は声を張り上げる。



「ニートじゃねぇかァアアアアアアアアア!!!!」


「………うん」




うわっ、何かすっごく肩身の狭そうな顔で俯いてる…


これが色の試練を全て乗り越えた猛者の中の猛者の姿か?


情け無さ過ぎて可哀想なんだが…




………まあ、取り敢えず賭けの話に戻るか。



「アルバイトしてた経緯は分かりました。で?賭けは?」


「…………あのピッツェリアの店長、実は私の超絶過去の親友の子孫なんじゃけどな」


「いきなり重いな」




…………まあ、これがエルフの定めなんだろうな。


本人も慣れたのか気にしてないし。



………本人が気にしてないなら深追いは駄目だな。


そう思った俺は会話を続ける。



「……いや何でもない。続けてくれ」


「ん?……まあ続きじゃがな、その店長と賭けをしたのじゃ」


「どんな?」


「格上戦で、負けたらシフト増加。勝ったら一生課金上限アップ。これじゃ」


「…………え?課金上限?」




何言ってるんだこの人?


あんたレベルの冒険者なら、1日で億を稼ぐぐらいザラなレベルのはずだろ?


いったい何が…



………聞いてみるか。


「何で課金上限を付けられてるんですか?てか上限いくら?」


「上限は月3万。そして上限を決められた理由はな…」


「………何ですか?勿体振らずに教えてくださいよ」


「…………国家予算」







……………ん?


今あり得ない単語が、俺の耳を左から右だったんだけど、流石に幻聴だよね?




そう思った俺は、迷わずインベントリから解毒剤を取り出し、一気飲みする。





ゴクゴクゴク  プハァ



不っ味。



そして耳を澄ます。



「ワシの課金のせいで、国家予算の5分の1が消えたからじゃ…」


「何してんの?」


「ごめんなさぃいいい!!」


「…………………はぁ」





そんな事ばっかりしてるから、エグい強キャラなのにも関わらず、プレイヤーからランちゃん呼びなんだよ。





…………てかこいつこんなにポンコツだったんだ。



原作では有能ムーブしてる時間の方が長かったから、ここまでであることを俺は知らなかった。



…………ダメエルフ過ぎるだろこいつ。



そう思いながら俺は、お主に負けたせいでこのキャラが手に入らなかったのじゃ!!とブチ切れていた。




………後で始崎1連させるか〜。



そう思いながら、俺は暗くなってきた空を眺めるのだった。






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