第124話  マジでお前何してんの?



あのアルバイトがエルフだったという真相に気づいた俺は、取り敢えずピザを食べ、あのエルフのシフトが終わったタイミングで、俺の宿に来るように声をかけた。





そしてそれからかなり時間が経ち…





午後5時。



遂に俺の部屋のフロント直通の電話がブルブル震えた。


そして俺は、一瞬でその電話を取り…





『何ですか?訪問ですか?』





と言った。



そしてフロントの受付の人は、少し言い淀みながら…



『………ええ、そうです』



歯切れの悪い返事をしてきた。


なので俺は、速攻で…



『じゃあその人をこの部屋に通して下さい』


『……………鍵を持たせてですか?』


『いえ、こっちから鍵は開けるので、遠慮なさらず』


「分かりました。御武運を…」





…………よくよく考えたら、あの受付の人相手にイタリア語使わなくて良かったな…




俺は若干後悔しながら、ガシャっと電話を切られるのだった。







★★★★






ビンポーン!




この部屋の呼び出しボタンを、誰さんが押してくれたので、俺は慌てて部屋の扉を開けた。




そして…





「……入っていいかの?」


「ええ勿論、ようこそいらっしゃいました、我が根城に。今日はゆっくりしていってください!!」


「………小僧がいる時点で、ゆっくりとは程遠いと思うのじゃが…………まあいいか、よろしくの」




このエルフこと、ヒレルド・オルトローデ・ランフェリス。















略してランちゃんが、この部屋に入ってきた。



「よぉランちゃん!!何から聞きたい?」


「………当然のように渾名でワシを呼ぶのぉ。敬意が足りておらん」


「ええ…でもランちゃん可愛くない?」


「可愛い」





フッ!やっぱ可愛いもの好きだよなこの人。


黒椒と相性良さそうだ。







………まあ、それはそれとしてこのエルフの本性である。




こいつの本性は聖剣の守り手。


ロト◯剣とかマ◯ターソードみたいな感じの、主人公が持つ武器である聖剣アイネの番人である。



………まあと言っても、我らが勇者が引っこ抜くのは大分先の話しなんだよなぁ。




悲しい。




………まあ取り敢えず、この人は聖剣の守り手である。

  


そしてこの情報を知ってるのは本人とこの国の重鎮、他国の強い冒険者ぐらいだ。



…………そして何でそんなやんごとなきお方が、ピッツェリアでアルバイトしてたのか…




俺はそれを聞くためにここにこのエルフもといランちゃんを呼んだわけである。




そして向こうも聞きたいことが沢山あったようなので、この機会を設けた訳だ。




「何から聞きたい?」


「………聖剣の見た目を何故知っていた?」





………だよなぁ。


普通に考えて、刀身は全部地面に埋まってる訳だし、聖剣全体を作るのは、いくら色魔法が便利とはいえ不可能だ。



そしてそれを、この色魔法のスペシャリストはよくわかっている訳だ。



………武器の威力までも真似するとなると、その見た目は勿論材質まで丁寧に見とかないとできない。



つまり間近で本物を長時間見る必要があった訳だ。


色魔法で複製しようと思ったのなら………ならな。




なのでこいつはそういった理由を含め、俺の事を問い詰めているのだ。



非常に合理的だね。




そして俺は、こう言う時のために用意していた嘘を展開する。




「ああ?見た目?アノクラナって言う可愛いご近所が見せてくれたよ?」


「…………あいつめ!!」



フッ!あいつならやりかねんという気持ち全開で、このエルフは地団駄を踏んだ。





………そして俺は、1番聞きたかった事を、このエルフに聞いてみた。





「何でピッツェリアでバイトを?」


「…………だってぇ、だってぇ」


「だって?」


「賭けに負けたんだもん!!」







…………俺高齢者相手のときは絶句しがちだなぁ。



俺はそう思ったのであった。






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