第107話 無敗の女王


そして俺達はゲーセンへと辿り着いた。




何気に30分以上程歩いたから疲れた…




…………まあ、いいか。





そして俺がそんな事を考えていると…






「………ねぇ?」


「ん?何だよ黒椒?」


「何で説明も無しにわざわざ遠いゲーセン来たの?近いとこあったし、なんならここに来る途中にもあったじゃん?」


「…………ああそれな………実はさ」


「何?」


「ここに仲間になりそうな奴が居てさぁ」


「…………で、来たと。………いやとっとと説明しろよ」


「………何でここに居ることが分かったんだとか聞かないの?」


「はぁ?お前なら仲間の特定ぐらい秒速でやるだろうが。ってか俺が一番聞きたいのは、何で俺をあんな一瞬で選んだんだって事なんだけど」


「…………関わりが薄かったからじゃダメ?」


「ダメ」


「…………怒んない?」


「誓う」





そして最終確認を終えた俺は、一呼吸おいたのち…




こう言った。










「お前さぁ、目付き怖いじゃん?しかも何か威圧的な服装してんじゃん?だからスリ対策になるかなって思って…」


「…………誓った手前申し訳ないだけどさ………殴るわ」


「んな気はしてたよ」





バゴォン!!!!





しっかり効いたわ。


クソ痛い。



はぁ全く俺は紙だぞ?


殴って良いとでも思ってんのか?




レベル差あっても痛みを感じちまうんだぞ?


もっと労れ。





そして俺は、まるで爺の発言ような事を考えながら、ゲーセンに入場した。








★★★★






ピコピコピコ!





………うるさい。


流石ゲーセンだな。


まあ、別にそこまでじゃないが…






そして俺はそんな事を考えつつ、広いゲーセン内を彷徨う。


すると…






「UFOキャッチャーしてきていい?」




黒椒がふざけた事をぬかしてきた。


なので俺は…



「事が終わったら報酬として取ってやるから、今はついてこい」


「…………取ってくれんの?」


「ああ」


「じゃいっか、行こうぜ」


「切り替え早いなぁ」




そして俺達はまた彷徨い始めた。















…………そしてあの会話から5分後。




俺は遂に目的の人物を発見した。





対戦型の格闘ゲームの前に鎮座している女の子。


ただ、向かい側の席に対戦相手はいないようだ。





………これだけ聞くと普通の状況だと思うかも知れない。


ただ、明らかにこの空間は可笑しかった。



何故なら…





「…………ねぇ無神、何であの席だけ空いてんの?このシリーズってかなり人気な奴じゃん」





………そう!!


この少女の向かい側の席だけが空いているのだ。


だが、他の奴には行列ができている。



あまりにも可笑しい空間だ。



そして並んでいる奴は、当たり前のように並んでいる。



まるで当然だとでも言わんばかりに…




「………行くか、黒椒」


「………え?並ぶの?」


「いや、あの空いてる席に」


「………いやいや明らかにヤバい奴でしょ、大人しくこの列並ぼうよ」


「うるせぇ、黙って来い」


「…………ああ!!もしかして無神このゲーム得意なのか?流石だな!!!!」


「いや、今日初めて見た」


「……………………は?」






そして俺は、その空いてる席に座った。


すると…





『君、このゲーム初めて?』




………向かい側の少女が話しかけてきた。


そして俺は当然こう返す。



『今日が初だね』




俺がこう言うと、少しの間が生まれた。


で、少女はこう言って来た。



『手加減、しないから』


『ん?ああお構い無く』





そして俺はこう返す。


すると…





ガヤガヤ!!ガヤガヤ!!




行列に並んでた人や、そこらのUFOキャッチャーで遊んでた奴らが集まってきた。



そしてこんな声が聞こえる。




『なぁ今日の挑戦者、勝てると思う?』


『いやいや無理だろジョニィ、無敗の女王だぞ?しかもあいつはそれを知らずに座ったみたいだ。勝ち目はない』


『えぇ!?嘘だろトム!?ああ、何て可哀想な奴なんだ…』




同情、好奇心、期待。


色々な感情をぶつけられる。


だが、俺はそれを無視して黒椒にこう言った。





「なぁ黒椒、ちょっとこのゲームのコマンドについてダンジョンウォッチで調べてくれ、キャラはグレイアイザ将軍、頼んだ」


「え!?う………うん分かった」




そして俺達がこんな会話をしていると…





『………私は大和(日本)語が分かるんだ。だからこそ言わせて貰う…













舐めんな」





レディ!!ゴォオオオ!!!!






………始まったか。



取り敢えずは技を出す事から始めよう。



そう思っていると…





フン!ヤァ!トォ!セイ!ヤァ!




これは………多分即死コンだな。








ケィ!!!!オォオオ!!!!




終わったわ。




………まあ、三本先守だしまだ始まったばっかだ。


気合い入れていこう。



そして俺がそんな事を考えていると…



「………調べたけどさ………どうやって見んの?」



黒椒が話しかけてきた。


なので俺は…




「俺にダンジョンウォッチの画面が見えるようにしながらスクロールしていってくれ」


「…………えぇ!?でもそれだとゲーム画面見えないよ!?」


「はよはよ」


「………分かった」




そして黒椒はしぶしぶ俺の言った通りにしてくれた。


優秀。




そして第二回戦。






レディ!!ゴォオオオ!!!





そして俺は試合が開始するのと同時に…


キャラのコマンドの横にさりげなく載ってるフレームレートごと記憶する。



そして…





フンッ!オソイ!ムダダァ!!オチロォ!!




ケィ!!!!オォオオ!!!!





俺が即死コンを決め、無事に勝った。



すると…







ガヤガヤ!!!!ガヤガヤ!!!!ガヤガヤ!!!!



野次馬どもの声量が上がる。


うるさ過ぎて何も聞き取れん。


まぁ、無視でいっか。






そして俺はそんな事を考えつつ、次の動きを考える…






相手は開幕ジャンプするのが癖なのか?


だったらここは置き技だな。



そして始まる。





レディ!!ゴォオオオ!!!!




そして…





ヴゴケヌカァ!?ムダダァ!フンッ!ヨケルナヨ!ウガテ!!



ケィ!!!!オォオオ!!!!




流れるような即死コンを決めた。


さっきよりもかなり美しく決まったな。


これにはストイックな俺も高得点あげちゃう。


そして俺はそんな事を思いつつ、次の動きを予測する。








…………俺の勘が言ってる。


開幕、スライディングだ。



そして試合が始まる…





ミエヌヨナァ!!フンッ!フンッ!フンッ!ノボレッ!!オチロォ!カタルニオチタナ!!!!




ケィ!!!!オォオオ!!!!





終わった。





ウィナァアアアアアアア!!!!グレイアイザショウグン!!!!



ハッハァアア!!オレニカツニハタンレンガタリヌゾォ!!






…………ぬいぐるみ取ったら帰るか。






そんな事を考えながら俺は立ち上がり…





『明日も来るから』





………そう言ってこの場を離れた。








★★★★






あんな奇行をしたのには、一応しっかり理由がある。



まず無敗の女王ことさっきの対戦相手、アリアーネは結界師という非常に強い職業を持っている…


プレイアブルキャラだ。



………まあ別に、あれを仲間にするのはここに来たオマケみたいなもんなのだが…



………それは置いておこう。




でまあ、仲間にする条件なのだが…



2日連続で奴にあの格ゲーで勝利するということだ。



ちなみに、我らが主人公光さんは一週間を懸けることにより奴に勝てるようになり…



9日で仲間にすることができる。




………ただ、俺は主人公程雑魚く無いので。


たったの2日でゲット可能という訳だ。




………まあ、この世界はリアルだし、シナリオと異なる場合があるから確定とは言わんけど。


かなり確率は高いはず…






そして俺はそんな事を考えながら、UFOキャッチャーでぬいぐるみを取る。




フワァアアアアン!チュチッ!テュゥウウウウウ!




…………取れた。




「ほいっ、やる」


「あ、ありがと」





そして俺達は、もうやり残した事はないと、このゲーセンを出て、帰路につくのだった。








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