第87話 爺から見た今の試合

side爺





ワァー!!!!


キャー!!!!


スゴーイ!!!!






…………歓声が五月蝿いのぉ。


年寄りを労りなされ。





………まあ、そんなことより、重要なことがあるの。





「…………回ノ恋心咲(かいのれん みさき)………奴め、生き残っておったか」



今は曖昧千尾という偽名を使っておるようだな。


この名は自身への皮肉なのかの?


まあ、旧友の子孫が生き残っていたことを、今は喜ぼう。


……そして。



「無神の成長が著しいな」



………前に見たときよりも、一皮剥けておる。


実によい。



そして歓声をあげている諸君、私が先にこいつを見いだしたのだぞ。


凄いだろ。


自慢の弟子じゃぞ。


だからギルドの面々よ、そんな目でワシの一番弟子を見るな。










…………まあ、取り敢えず。




………あのアイテムは本当に使っておらんようだな。



……しっかし回ノ恋相手にノーダメはとんでもないのぉ。



まあ、ワシの方が強いのじゃけれど。





………また話が逸れたの。



これだから年寄りにはなりたくない。


無駄に余裕が生まれて回り道が多くなる。


…………違う違う。




「今度、夏休みに奴が帰ってきたときは………何作ろうかの?」



やはり蟹か?鍋か?鍋だな。



………てか。




あの少女………もしかしなくとも勇者ではないか!?


名前は………妙寺園光?聞いたことないの。



………まあ、奴のクラスメイトだし、奴が上手くやるだろう。


心配はいらぬ。




…………てか。




暇じゃの。


奴とそのクラスメイトと、あと数人ぐらいしか良さげな人材がおらん。


速く戦え、無神。


隠密するな。




…………ん?待てよ?


これ帰ってもバレないのでは?


竜我も帰ったようだし…


ワシはここで一足先にお暇するかの。




そうしてワシは立ち上がり…



「誰が1位か分かった勝負はつまらんのぉ」ボソッ






そう一言を誰にも気づかれぬように言い。


後方理解者面兼、後方師匠面をしながら…


ワシはこの観客席を後にした。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る