第85話 ここにいるはずがねぇだろ




「よっ!」




バコォオオオン!!!!




「死ねるぞ、これ」


そんな感想を口にする。


なぜなら…



「たった一振でこれかよ…」



この斬撃が通り過ぎた地面が抉れていたからだ。


おっかない。


………てか、この星月にこれできる程強いキャラっていたっけ?


流石に知らないぞ…



そう思いながら俺は振り返った。


そして理解した。


こいつならできる…………と。



曖昧 千尾(あいまい ちお)。


職業魔剣師の、である。


そしてこいつはめいゆうRTAと呼ばれる割りと熱い界隈の最先端キャラである。


こいつがいないRTAパ見たことない。


何たってこのめいゆうというゲームは死ぬ程ボリューミーだ。


RTAなんて正気の沙汰ではない。


実際、こいつが居なかったRTAパはクリア時間11時間だったのに対し…


こいつのいるクリア時間は3時間半。


それ程までに強いキャラなのだが…





何故ここに?


お前は北海道で、没落した自分の家名をもう一度世間に轟かせることができる仲間を探しているじゃ無かったのか!?



………いやまあ、確かにお前の通ってた中学の話は一度も無かったが…


ここに通ってるなら光ともうここで出会え………






………そういうことか。


原作での中学の時の光はマジでヤバかったらしいからな。


それでお目にかからなかったのだろう。



…………初対面のふりしてやがったのかお前、原作で。



てか…


「それどころじゃねぇ!!!!」



俺はすぐさま世界の中心を展開し…



「白夜ぁ!!!!」




バコォオオオン!!!!



この距離の同時発射。


流石に避けれねぇだろうとたかをくくっていた。


だが、次の瞬間、真後ろに気配を感じた。


つまり…




避けろぉおおお!!!!



俺は首を思いっきり曲げながら膝を曲げて、首を狙っていた斬撃をギリギリ避ける。


で、カウンターとして回し蹴りを叩き込んだ。



ズバァアアアン!!!!



バガァアアアン!!!!




今度はしっかりと直撃した。


で、奴はそのまま廃ビルに突っ込んだ訳だが…



ガララララララ




奴はやはりあの瓦礫を這い出して来た。




そして一呼吸置いた後に、口を開いた。





「ねぇ、私と一緒に天下取りたくなぁい?」


「…………」









…………原作で、主人公の仲間になるかを決める対決の前に言ったセリフである。


聞けるなんて嬉しいな!!!!


まさか俺に向けて言われるとは思わなかったが。



………てか。



タイミング悪すぎだろこいつ。


何で今来たんだよ、後にしろよ。


今は雑魚狩りしないといけないんだよ。


お前みたいな少数派の化け物と戦ってる暇ねぇんだよ。




………でも、今逃したら一生仲間にならないし…





というのも。


こいつは家を復興させるためなら何だってできるヤバい奴なのである。


無理そうだったらどれだけ仲良くなっても一瞬で切ってくる。



………恋仲になった時は別だが。




………話が逸れたが、つまり俺はこいつを仲間にしないといけない訳である。



つまり…






戦うしかない。







………覚悟を決めた俺は本気で気合いを入れる。








魔剣師というのは、非常に強いが非常に継戦能力が低い職業なのである。


全体的に消費MPが多い。


だからこいつには、優秀な相方がいるわけである。


自分が戦えないときに戦ってくれる相方が。



…………だからまあ、何が言いたいのかと言うと…


短期決戦で俺の実力を見せつけなければならない訳である。



「ほっ!」シュッ




俺はこの化け物に向かって踏み出した。


奴の顔がにやける。



そして奴は、自身のピンク色の髪の毛をたなびかせながら…


俺に向かってくるのだった。

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