第78話 実力を示せ


俺は人気のない、木に囲まれたベンチを見つけ、そこに座った。


すると…




「久しぶりじゃの」


「おっ、出たなクソ爺」


クソ爺が出現した。


で、俺は聞きたかった事を爺に聞く。


「何で俺のクラス戦見に来なかったんだ?」


「…………何故ばれた?」


「観客席にいなかったからだよ!!!!」


「…………止めなかった理由とか聞かんのか?」


「分かるよ、どうせ自分が止めても、竜我は取り繕って、浪江は怖がって、仲直りはせず、根本的な解決にならないのと、シンプルに目立つと不味いからだろ?」


「ふぉ!ふぉ!ふぉ!流石よく分かっておる、それを分かって竜我はよりによってあそこで騒ぎを起こしたということまでも………の」


「辛そうだな、卵サンドが美味い」


「お主相変わらずじゃの」


「どうも」


「ああ、そうそう、見に行けなかったのには理由があるのじゃ」


「おけ、聞いてやろうじゃないか、その言い訳」


「………だって、結果の分かってる試合なんて見てもつまんないじゃろ?」


「確かに」


「おっ、少し上機嫌になったの」


「うるさい。………って何で勝つって分かったんだ?俺の職業すら知らないのに?」


「白々しいの、あのアイテムの数々という名の初見殺しで、このわしを打ち倒したというのに」


「………ああ、そう言えばそうだったな、封印してたから忘れてたわ」
















今から結構前、俺が爺の職業が剣聖であると知ったとき、俺がよそよそしくなって、最終的に喧嘩したって出発のとき話したろ?



あれの詳細。



爺と決闘する事になって決闘したんだよね。


でも普通にやっても勝てるわけ無いじゃん?


だから準備期間をもうけたんだよ。


一週間。


で、その一週間を使って、爺の館の地下にある素材倉庫って場所に一週間籠ったんだよね。


で、そこにある素材がさ、どれもラスダン手前とかその少し前位の素材ばっかりだったんだよね。


…………お魚系の素材無かったけど。


で、持ち前の知識でアイテムを合成しまくって、クソ強い装備を作り、初見殺しで見事この爺に勝利したのだ。


だが控えめに言って、もう勝てる気がしない。


あんなの通用するの一回だけだ。



そして俺がそんな事を思っていると…





「封印か、いい判断じゃの。で、ちなみにお主、そうした理由は?」


「戦闘力が上がっても、戦闘能力が上がる訳じゃない」


俺がそう答えると、爺は満足したような顔で…


「分かっておるな。そうじゃ、いくらアイテムでステータスが上がっても、戦闘技術は育たん、ましてや発展途上でそんな事をすれば、お主の技術は今後一切身に付かぬじゃろう」


「ああ、そうだな」


俺がそう、この青い空を見ながら答えると…爺の顔の雰囲気からシリアスが消し飛び、こんなことを聞いてきた。


「ときにお主、わしに勝ったとあんなに堂々と宣言しよったよな?」


「ああ、事実だからな」


「………じゃあ今から決闘するかの?」


「…………やだよ、結果見えてるし」


「ほーう?何故じゃ?」


「…………白々しい、二回目はどうあがいても通用しないからだよ!!!!」


「はい、よく言えましたの」


「はっ!でも俺の勝ち越しだからな?そこは理解しとけよクソ爺」


「………」ケットウシンセイヲオクリマシタ


「おいこら孫と同レベの対応するな」


「ふぉふぉ、冗談じゃ」


「はぁ、そうかよ、じゃあこれで」



そして俺はベンチから立ち上がり、あいつらの元に戻ろうとすると…




「無神」



爺に呼び止められた。



「何すか?」


「次の試合では実力を示せ」


「ん?ああ、竜我が決闘挑んで来るからですか?」


「………そうじゃ」


「心配してるとこ悪いですけど、あいつ絶対来ませんよ?」


「んなことお主に言われんでも分かっておる」


「そうですか………じゃあこれで」



「………あ!そうそう無神」


「………まだあるんですか?」


「ふん、これで最後じゃ」


「何ですか?」


「お主、友達作りは順調か?」


「………何でそんな事聞くんですか?」


「だって無神、いくら友達が欲しいからって、パシりなんて…」


「パシりじゃねーよ!!!!俺が買ってきてやるって言って来たんだ!!!!クラスメイトを労る気持ちだ!!!!」


「聞けば聞くほどパシりじゃの」


「黙れぇえええええええ!!!!」


「こんな感じかの?私達友達だよね、買ってきてくれるよね?」


「殺すぞ」


「すまんすまん、冗談じゃ。…………で、100人いけた?」


「今ここでぎっくり腰ならねえかな、この爺」


「ならん、わしはピンピンじゃ」


「クソが。………じゃあ行くわ」


「おう、頑張るのじゃぞ」


「うるせぇ、黙って観客席から見てろ」


「ホイホイ、しつこい弟子じゃの、そんな言われんでも見に行くわ」


「うい、じゃあバイバイ」


「うむ、バイバイ」






そして俺は爺と別れ、あいつらの元に向かうのだった。






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