第77話 どうしよ


…………どうしよ。


取り敢えず飯は食べたいな。


…………でも浪江とあの姉貴を、今は離さなくちゃいけないし…




………取り敢えず、飯買ってから考えるか。


そう思った俺は、ゆっくりとこの人ごみの中をするりと抜け、ロボットが担当している受付までやってきた。





「あの~すみません!!卵サンドと肉そぼろおにぎりと…………なんだっけ?まあいいや、下さい」


「了解しました、どうぞ」


「ざぁっす!!支払いはダンジョンウォッチで」


「ピコーン、ありがとうございました」





よし!!他の人と竜我の視線が痛すぎる以外は何事もなく買えた。


あの空いてる席で食べようかな?


そう思って俺は卵サンドと肉そぼろおにぎりを抱えながら、空いている席に向かって行った。



すると…






ブチッ!!




という音がしたのち…




「止まれ」




と竜我に制止をかけられた。



「何ですか?」



俺は取り敢えず白を切りながら、空いている席に抱えている食料を置いたのち、竜我に向き直った。




「で、何ですか?」


「………喧嘩売ってんのか雑魚」


「黙れクソ雑魚」



ブチッ!!




周りの人ごみがどよめいた。


それぐらいの覇気を、こいつは今放出していた。


だが…















爺程じゃない。


「おー、コワイコワイ」




そうてきとうに返すと、我に返ったような顔をしながら、浪江が俺にこう言った。


「無神!!煽らないで!!この人は現剣聖なのよ!?」


「ん?知ってるぞ?だからどうした?」


「え!?」



何で浪江こいつにこんなビビってんの?


俺がそう思っていると…



「………浪江?こいつはお前のお友達か?教育が必要みたいだがな」


「お…お姉ちゃんやめて!!わ…私のことはいくらでもぶっ飛ばしていいから、無神だけは!!」


「浪江、静かにしてろ」


「え?む…無神?わ…分かった」


「おいクソ雑魚」


「………」ケットウシンセイヲオクリマシタ


「決闘するのは構わねぇが………お前、負けるぜ?」


「……………何だと?」


「何言ってるの無神!!年齢が上の方が絶対強いんだよ!?勝てないよ!?」


「だから静かにしてろ浪江」


「無駄な問答はいらない、開始しよう」


「………おい、いいのかよ?」


「無駄な問答は…



「俺は、レベル無しの状態で、前剣聖に勝った事があるんだぜ?」




















………………辺りを静寂が支配した。


だが、面喰らった現剣聖は、すぐに余裕を取り戻した。


「………お前は剣聖というグランドジョブを何も分かって無いんだな」



「………ほーう?というと?」


「剣聖には、《判断》というスキルがある」









《判断》


任意でいつでも使える上にMPの消費がない、原作での剣聖の十八番とも言えるスキルだ。


その効果は、現状の最善手を選ぶという効果と…


、という効果がある。



で、俺は勿論これを知っていた。



じゃなきゃ、


こいつに《判断》が無かったら、嘘扱いされてただろうからな。


そうなると本当に、この人ごみの中にしれっと紛れ混んでいる前剣聖こと、爺の出番となる。



…………いや、いるなら止めろよ…



止めれない理由も分かるけどさ…




…………そして。




「っ!!何だと!!」


「ああ、ちなみに言うと、ハンデがあったわけでも、俺に特別な勝利条件があったわけでもない。ただの実力勝負の決闘でだ」


「っ!!クソがっ!!!!」


「…………じゃあ、決闘しようか」


「…………ちょ、ちょっと待て」


「ん?何?」


「………ここは引く」


「ダサいね」


ブチッ!!




………キレる位なら挑んでくればいいのに。


そっちの方が楽だし…



「………覚えておけ」


「うわっ!どこで覚えたんだ?そんな三流の負け惜しみ!?」



ブチッ!!





流石爺直伝の煽りなだけある。


効果抜群だな。




そして取り敢えずあのクソ雑魚を引かせた俺は、浪江に近づく。


「立てるか?」


「う、うん」


「よしよし、じゃああのクソ雑魚のクソみたいな言動を我慢したで賞でこの卵サンド1切れあげる」


「………うん、ありがと」


「よし!!じゃあ俺は行く、この肉そぼろおにぎりを境花に届けなくちゃいけないからな」


「うん、行ってらっしゃい」




そして俺は、アイコンタクトで爺に…




『ちょっと集合』



と送り、食堂の外に出たのだった。

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