第53話 俺を殺すと言った女

回想




前世。


俺が中学一年生だったときの話なのだが。


俺はとあるゲームにハマっていた。


その名はバトルモンスター、略してバトモン。


その舞台は、バトモンと人間が共存する世界だ。


主人公はバトモンチャンピオンになるために、バトモンを集めつつ、色々な困難に立ち向かって行くという感じのシリーズである。


そしてアクションゲームになることもあったが、基本的にはコマンド式のRPGになっている。


その戦闘要素はおもろいの一言に尽きる。


その戦闘要素というのは、バトモン同士を戦わせるというものである。


バトモンには、最大4つまでの技を覚えさせることができ、それを使って相手のバトモンのHPを0にすると勝利である。


オンラインのランクマッチの要素もあるし、世界大会が開かれたりするほどに人気なのである。


とても人気なシリーズで、俺が生まれる前から愛されている作品だ。


確かアニメにもなってたんだよなぁ~。



まあ、それは置いといて。


俺はそのゲームに思いっきりハマった。










そして当時、俺は少し有名人だったのだ。


『腐った人』という名前で、ロックオンという超有名な知らない人いるのかな?という感じのFPSのガンアクションをやっていたのだが。


俺が没頭してしまった結果、何か有名な人が配信してるときに軽く捻ってしまったようで、有名になりたまに完全匿名で公式大会に呼ばれることもある程に有名になった。


そして当時負けなしであったことから、視聴者から『不腐』(腐敗と不敗をかけている)というあだ名をつけられたりもした。



ちなみに、ロックオンはバトモンを始めた頃に引退した。



プロチームからお声も何度かかかったが、ロックオンがやらないといけないものになりそうだったから全て断った。



まあ、それはそれとしてバトモンにハマっていたのだが…



どうやら俺が、バトモンの主人公の名前を『腐った人』にしていたせいで(他にも理由あり)、俺がロックオンをやめてバトモンをしていたことがネットに広まり。


何か日本一位の人と対戦することになった。


そしてどうやらその人はVチューバー?というものをやっている人らしい。


ゲーム以外に興味無さすぎて、Vチューバーが何か知らなかった。


いや聞いたことはあるんだろうけど、多分忘れてたのかな?


まあ、それはさておき研究もかねてその人配信を見ていたのだが。



『え~何々~!不腐神話ぁ?終わらせてやんよ!!』



これ以外にも散々生意気なことを好き勝手配信で言われてぶちギレた俺は、こいつの今までの対戦を全て視聴するという狂行に走り………














当日相手の行動を全て読み、無事完勝した。


パーフェクトゲームだった。


そして日本一位に勝ったし、もうやること無いでしょと思い、バトモンを引退した。



そこからは、別のオフラインゲームにハマっていたのだが。



何か久しぶりにロックオンやらね?と公式からお声がかかり、久々にロックオンの大会に出ることになった。




そしてまあまあ楽しんだのだが、終わった後にファスメ(ファストメールの略、現実の完全匿名版DMみたいなもん)がロックオン仲間から送られてきた。


その内容は、ヤバいことになってんぞ!!!!ということだったので、詳しく見てみると…



何か俺が圧勝したVチューバーの人がえげつない配信をしていたということらしい。


なのでその配信のアーカイブ?と言われる物を興味本位で見てみると…












『殺す殺す殺す殺す殺すグビッ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すグビッ殺す殺す殺すグビッ殺す殺す殺すグビッ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すグビッ』



何かエナドリを飲みながら、俺視点のロックオンの大会を動画でリアルタイムで見ながら、殺すとうわ言のように呟き続けている…



放送事故配信がそこにあった。











…………そんなことがあってから3ヶ月後。



どうやらそのVチューバーがバトモンで世界一位になったらしい。


マジで?と思いつつ、俺は久々にバトモンがしたくなったので、そのVチューバーにファスメで。



『二週間後の午後10時にバトモンしようぜ!!』



と送った。



ちなみに…



『殺す』



の2文字で返信された。


殺意が言葉よりも先に出てる!?


と思いつつ、二週間後………











俺は二週間で緊急準備を終わらし。



紆余曲折ありつつ勝ったのだが…



『……………………』



対戦し終わった後、俺は少し配信を見に行ってしまったのだが…


完全に放心しているVチューバーが画面の右端に鎮座しており、そっと配信を閉じた。





★★★★

現実




これが俺の、殺される程憎まれたという思い出である。


ろくでも無さすぎて笑えてくる。


なのでまあ、俺がこの経験を元にして言えることは…


「本当に悪い事をして恨まれたのなら、それは自分の十字架として背負って行け。でも、何も悪い事をしてないのに恨まれたのなら気にするな。……………それが一番よかった」


「…………あっそ。無駄に言葉に重みがあるわね、何故なんだい?」


「何でだろう、涙出てきたわ」


「はぁ、よしよし」


そう言いながら俺の頭を撫でてくる浪江を一瞥し。


俺はこの仮想空間の空を眺めるのだった。






……………青いなぁ。










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