第35話 おいちょっと待てや主人公ォオオオオオオオオオ!!!!



現実に引き戻された俺は、ゴーグルを外して椅子から立ち上がった。


すると…


「ああ、やっと起きたのね」


「まるで俺がさっきまで気絶していたかような言い方だな、クソ雑魚」


何故か俺よりも速く敗退していた境花と目があった。


「あら失礼ね、あなたがあれだけ無茶苦茶したもんだからあの広場に人が集まってきてね、一応善戦したのだけれど囲まれてお陀仏だったわ」


「わら」


「死ね」


シューン


そう言いながら境花は、手に持っていたシャーペンを俺にぶん投げてきた。


コテッ



着弾した、許せねぇ。


「あっそうそう、私たち同じクラスよ」


「………マジ?お前もCクラスだったの?」


「うん、そうよ。てかこのゴーグル凄いわよね、敗退した瞬間に所属クラスが表示されるなんて。分かりやすいわ」


「………ああ、そうか」


正直いまだに疲れている俺は力無く返答する。


……………まさか最後に見た光景が、満面の笑みの浪江だなんて。


今日は厄日だな。


そう思いながら。


「てか天人、私達今からダンジョンウォッチを受け取りに行かないといけないのよ?そんな悠長に構えてていいの?」


「別にいいだろ、今日中に受けとればいいんだから。俺はもう寝る」


「そう、じゃあまた明日」


「へい明日」


ガラガラガラ


そうして境花は退室していった。


そして俺は眠気がいきなり襲ってk………


「……………ZZZZZZZ」




★★★★





時間が経ち、俺は起き上がった。


そして30秒前に起きた俺は時計を見る。


その時計の時間は午後9時を示していた。


………ヤバい、夜になってる。



「早く教室に行かないと!!」


そうして俺は教室に急いだ。




★★★★





この世界にはダンジョンウォッチなるものが存在している。


そしてそれは、転生前の世界でいうスマホのようなものである。


あれさえあれば、ダンジョンに入るときの身分証にも、モンスターの素材を換金するのにも使える超万能アイテムなのである。


そしてそれが、自分のクラスの自分の机の上に置かれてるのだ。


それを取りに行かないと。


てかあれ最初に登録した人の物になるからな。


もし自分のダンジョンウォッチ失くした奴に、先に登録されていたら、もう俺はダンジョンウォッチ無しで過ごさなくてはならない。


それは不味い、いや有り得ないだろうけど。


そう思いながら、俺は何故か9時なのに光のついてる教室に足を踏み入れた。


すると…


「………何やってんの?」


「フエッ!!!!!!」



主人公が誰かの机の前に立っていた。


ん?いや待てや、あれよく見たら俺の机やないかい。


何で主人公が…


そう思っていると。


俺はその意味を一瞬で理解した。


そう、主人公の手の中にあるものを見て。



「その袋さぁ、ダンジョンウォッチのだよなぁ。なぁもしかしてあんた、俺のd…」


「あああああああ!!!!用事を思い出した!!!!じゃあこれで!!!!」


「おいッ!!ちょっまっ」


ヒュウウウウウウン!!!!


「逃げやがった…」


そのあまりにも速すぎる逃げ足にドン引きしながら、俺はその場に立ち尽くした。


そして俺は地面に崩れ落ちた。


ガタン


終わった。


てかそもそも本来主人公は俺のダンジョンウォッチをパクるんじゃなくて、あの人に出会って………




「ああ!!!!思い付いた!!!!主人公の代わりにあの人に会いに行けばいいんだ!!!!」



これは原作の話なのだが、主人公はとある理由で配られたダンジョンウォッチを失くす。


で、途方に暮れていた時に、器利海亜(きり うみあ)に会うのだ。


そして主人公は器利に出会い、新しく開発したダンジョンウォッチをお試しでと渡される。


そしてひょんなことがあって器利と接点ができた主人公は、器利のお手伝いをしながら、その他のダンジョンウォッチとは一線を画す性能のダンジョンウォッチを使って、ダンジョンを攻略していくというのが本来のシナリオなのである。


あのあれ、爺と出会って初めての修行のときのあれ。


あれが改造版の性能。


控えめに言って名前以外最高の奴。


あれを本来なら主人公が持っていたのだ。


だが仕方ない!!先に奪ったのはそっちだからな!!


ここで器利に会っても文句はないだろ!!


そう思いながら、器利を探そうと教室から出たが……



ガタン












このクソデカイ中学校の何処にいるんだよ………


俺は開始1秒で現実を理解し、地面にまた崩れ落ちた。


もうおしまいだぁ。


そう思っていると………


「あの~一年生さんですかぁ~?」


「へ?」


俺はとある人物に話しかけられた。


そう、その何度も聞いたことのある声は。


バサッ


後ろに振り返り、俺はその人の顔を確認した。



「ぁ」


そう、その顔は…………





















器利海亜の顔面だった。


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