第31話 お前を信じる俺を信じろ
ダッダッダッダ!!!!!
「走れェエエエエエエエエ!!!!」
「待っててばぁー!!!!」
ダダーン
「到着!!!!」
「………ん?ああ戻ってきたの、勝ったのね?」
「は?何言ってるんだ、俺の後ろを見てみろよ」
「?」
境花は俺の後ろへと視線を移した。
そして…
「………倒せてないじゃん、何で戻ってきたの?負けそうだったから私に助けでも求めにノコノコと帰ってきたの?」
「んな訳ねぇだろ(そうだよ)、お前に嫌がらせするためだよ」
「ん?、まあじゃあ取り敢えずアイツは私が倒すから引っ込んどいて」
「うん!!!!(満面の笑み)」
そして俺は境花より後ろに下がり、あぐらをかいて座った。
「ガンバ~w」
「…………何こいつ」
こいつ呼ばわりとは失敬な!
俺はそんな事を考えながら、境花が主人公の前に出る様を見届けていた。
「待ってくれててありがとう、そのお礼として一瞬で現世に返してあげるわ、クソ雑魚が」
「待っててあげたのに暴言吐かれたぁ~、酷いn…
「フッ!!!!」
開幕不意打ちとか、流石境花さんだなぁ。
俺はそう心の中で思いながら、境花が殴り掛かる様を眺めていた。
そして拳がおでこに当たりかけた瞬間、主人公がバグみたいな挙動で不意打ちを避け、カウンターをみぞおちにぶちこんだ。
「ぐふぉ!!!!」
「あれぇ?」
そしてビビる程綺麗に決まったカウンターに、主人公が首を傾げる。
……………そう!何を隠そうこの境花さん、根っからのバッファーなので、魔力と耐久力とバフ技以外何もないに等しいキャラクターなのだ!!!!
攻撃性能なんて無いに等しい。
え?じゃあ何でこんなにもドヤ顔主人公に立ち向かえたのか?
それはレベル差による慢心とこいつの過去によるものだ。
別に根っからのバッファーでも、レベル上げまくれば通常攻撃で敵倒せるでしょ?
そういうこと。
でもこの主人公は控えめに言ってバグみたいな性能しているので、そんなレベル差無意味に等しい。
通常攻撃で倒せる程弱くはない(断言)
ザッザーン
そしてこちらにぶっ飛ばされ転がってきた境花に一言添える。
「お前今、最高に輝いてるよ…」
「…………(無言の殺意)」
そして俺は内心同情しながら、境花に話かけた。
「これで分かった?協力しないと勝てないよ?」
「…………分かったわよ」
よしよし、やっと勝機が出てきた。
「じゃあ18分稼いで」
「お安い御用だ!」
「…………………………え!?普通そんなすぐ了承する!?こいつ相手に18分よ!?少しは文句言えよ!!」
「必要無し!!!!」
ゲームで飽きる程見たからな、そのバフ技!!!!
「任せたぜ!!!!」
「え…あっはい」
「あっそうそう、俺がお前を信じる代わりに、お前も俺の事を信じてくれ」
「んえ!?はっはい何を…」
「俺の勘は鋭すぎるということをだ!!」
……………しっかしいきなりしおらしくなったなぁ。
まあこいつの過去を思えば不思議じゃないか。
これは原作の境花ルートで語られたことだが、こいつのバフ技は全てとてつもない時間がかかる。
だから職業を得てから最初の方は、冒険者をやっていた父さんと母さんしかパーティーにいなかった。
バフ掛けるのに時間がかかるバッファーとかあんまり需要ないもんな。
そしてこいつのバフは効果時間も短い。
だから戦闘前に掛けるバフとしても需要が無かった。
だがだとしても、たまに初級ダンジョンに一緒潜ってくれる父さんと母さんで、こいつの心は満たされていた。
そう、両親が上級ダンジョンで亡くなるまでは。
そこからは祖父母の家に転がり込み、ギルドで空いてるパーティーに入れて貰い、一回目の探索で問題のあるバッファーということが露呈し、パーティーから追い出されてまた空いてるパーティーに入るという無限ループを繰り返していた。
何故そこまでしてダンジョンに潜ったか?
大好きだった両親の復讐の為である。
いつか父さんと母さんが殺されたあの上級ダンジョンに入って復讐したい!!!!
その気持ちで強くなるために臨時でパーティーに入り続けていた。
だが問題のあるバッファーということが広まり。
誰もパーティーに入れて貰えなくなった。
だがそれでもこいつは強くなることを諦めず、1人でダンジョンに潜り続けた。
そしてそんな人生を送ってきた結果、誰かを信用することも協力することも忘れた。
それが境花というキャラクターの過去である。
だが俺は知っている、こいつのバフが、このとんでもないデメリットを抱えていたとしても余りある性能だということを!!!!
……………ん?そんな性能してるんだったらどっかのパーティーには入れて貰えたんじゃないの?だって?
それは違うぞ諸君ら。
だって考えてみろよ、命懸かってんだから自分よりも少し弱い位のダンジョンに行くのが普通だろ。
そしてそんな中、バフの効果だけ強くて、使いにくい奴がいても需要ないだろ。
普通の効果で普通の使いやすさがある方が圧倒的に需要あるだろ。
そういうことだ。
そして俺は、脳内で語りに語ってから、主人公に向き直った。
「ちょっとカップラーメン六個位作らせてくんない?」
「いやこの仮想世界のどこにあるんだよカップラーメン」
主人公にド正論を吐かれながら、俺は両手にある光剣を構えた。
「行くぜ!!」
「ああ、せっかく待ったんだからとっととこい!!」
そして俺はまた、主人公に向かって駆け出した。
まあ今回は、後ろに頼もしいバッファーも付いてるけどな!
そう思いながら、俺は切り札の一つを解放した。
「発動!!白夜!!」
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