第9話 手紙②
キーンコーン カーンコーン
二時間目が終わるチャイムが鳴った。俺はこの二時間の間に、あの手紙の人に断る妄想を繰り返し、これはダメ。これは良し。とか思いながら、妄想を見事に完成させた。
「慎、大丈夫か?顔色が悪い。」
心配して近づいて来たのは、川上 吉弘(かわかみ よしひろ)こいつは、このクラスで一番イケメンと言われている存在。当の本人は、そのことを知っているのか、知らないのか、俺はわからない。
ま、耳には入っていると思うんだが…でも、そしたら、浮かれるよな。普通は…
「え、俺、顔色が悪い?」
「うん、マジ。」
「え、マジなん?」
俺は自分の顔を触ってみる。
「顔色のことを言ってるんだから、鏡でも見てくれば?触ってもわからないよ、慎」
「あはは…そ、そうだな。見てくるわ。」
川上に言われた通りに、俺は鏡を見に行くため、廊下に出てトイレに向かった。
別に、大して気分が悪かったわけでもないため、俺は、大丈夫だろうと思いながら、トイレへと向かっていると、なんだか視界がぼやける。胸が苦しい。とんでもないくらい、苦しい。視界が完全に真っ暗になった。
「う、うう。」
目が覚めると保健室のベットの上にいた。ここにいる理由が全くわからず、俺は戸惑った様子でキョロキョロと周りを見る。カーテンがしてあり、外がどうなっているのかわからない。俺はカーテンの隙間を見つけると、そこをのぞいてみた。
ソファの上で黒髪ロングの見た感じ、とても可愛い見知らぬ女子が不安そうに座っている。
すると、バッとカーテンが開いた。
「あら。起きたの。古宮君。体調どう?っていうか、そこの子が古宮君に言いたいことがあるらしいの。先に話を済ませてちょうだい。」
保健室の先生である 佐々木 奈緒子(ささき なおこ)先生が言った。
その女子はベットで起き上がっている俺に近づいて、モゴモゴと何か喋り出した。
「あの…その…あの手紙、読んじゃいましたか?」
あの手紙…というのは多分、あのラブレターだろう。俺は「見たよ」と答える。
「そ、そう…です…か。あの手紙のことは忘れてください!何もなかったことにしてください!」
顔を真っ赤にして言う、その子はとても可愛らしく思えた。
「分かった。もしかして、お前なの?俺の下駄箱に入れた手紙の持ち主って。」
「そ、そうです。ごめんなさい。本当に忘れてください。色々と順序を間違えてしまったので!」
うん?順序を間違えた?うん?ってことは、好きなん?俺のこと。
「は、はい!好きです!」
ブフォッ!と先生用のデスクの上でコーヒーか、お茶を飲んでいた先生が吹いた。
っていうか、俺、今、声に出したか?
「それでは!また!」
その見知らぬ女子は保健室から出ていった。
「ええっと、話は終わったようね。じゃあ、本題に移りましょうか。」
俺は訳が分からないまま、佐々木先生の言う「本題」に移った。
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