第7話 独りの青年に寄り添う君

「ただいま〜。」

俺は家の扉を開けて声を出す。

もちろん、帰ってくる声なんてない。

親共々、毎日働いき、今は二人して出張中だ。残されたのは俺一人。

暗い家に電気をつけるよう、音声認識ロボットに声をかける。

「電気をつけてくれない?」

『はい。わかりました』

こんなの、どこが会話なんだよ。なんていつも考えながら、俺は電気がついた自分の部屋に向かう。

「はあ。」

さっきまでの「小説を書けた」という嬉しい気持ちがどこかえへと飛んで行ったかのように、俺は寂しさでいっぱいになった。もう、何もしたくなかった。兄弟だっていない俺には、もう家では完全に一人ぼっち状態だ。


ピロン


スマホから通知音が鳴る。俺はポケットからスマホを取り出す。

「羅美奈から?」

メッセージ画面にとぶ。そこに書かれていたのは。

–––––ね、見てみて。これ。––––– こう書かれていた。

俺はその後にきた写真を見る。猫が目をまん丸にして、こちらをみている写真だった。

–––––可愛くない?ほんっと可愛いんだけど!––––

俺は笑ってしまった。でも、本当に可愛かった。

「可愛いな。っと。」

俺はメッセージを送る。そして、その写真を少し眺めて、俺は時計を見る。20時だった。夕飯はさっき、秀英と別れた後に外で食べたため、俺はそのまま風呂へと入った。




「わっ、メッセージ返ってきた。可愛いなって…それだけ⁉︎はあ…何だよ、あいつ、今、家なのかな?なんか、毎回、暗いのよね…あいつ。」

私はポイッとスマホをベットに投げた。




「ふう。気持ちよかった。」

俺は、濡れた髪をタオルで拭きながら、テレビをつける。この時間帯は、特に面白そうな番組は放送されていないようだった。だが、俺はずっと楽しみしていたアニメを録画しておいたのだ。昨日、放送された『僕のお隣さんが可愛い件』という、いわゆるラブコメだ。

「うふふふっっふふ。」

我ながら、結構な気持ち悪い笑い方をしたものだ。なんて思いながら、アニメを再生する。でも、本当にこのアニメは面白い。

あらすじは確か、アパートに住む大学生の隣の空室に、とんでもない可愛い美少女が引っ越してくる。んで、徐々に仲良しになり、お互い惹かれあっていくという話だ。

だが、この話、もうそんなあらすじを飛び越えて、とうとう同棲し始めたのだ。もう、作品名と違うじゃないかって俺も、このアニメを見ている人たちも思っている。でも、面白いんだ。だから、誰も、このアニメの流れに文句なんて、一つもなかった。

そんなこんなで、アニメを見終わる俺だった。

「アアアアアアアアアア、課題があるんだったああああああああああ」

テレビを消して、俺はニ階に上がる。俺は部屋に入って、カバンから、今日配られた課題に手をつけようとした。



ピロン



俺はベットにあるスマホの画面を覗き込む。

「えっ、何、この通知の量…」

––––––何が、可愛いなっだよ!

––––––おい、アホ。これから、電話するからな!

––––––もう、なんで出ないの!アホ〜!

「や、やばいな…ひとまず、電話をかけるか…」

俺は独り言を呟き、スマホを持ち、電話をかける



プルルルルルルル


ブツッ



「はーい…羅美奈です…」

「ご、ごめん、羅美奈…その、なんで…怒っているのかを…」

「ああ、それね。猫の写真送ったでしょ、それを一言で可愛いなで終わらせたから怒ってるの…って言うのは嘘で、実は………」

「えっ、嘘なのかよ。で、実はってなんだよ。」

「あ、いや、なんでもない。こ、声聞けて良かったな〜って、じゃ、また明日!おやすみ〜!」

「お、おお。な、ちょ、待て、切るな!おい!」



ブツッ


プープープー



「な、なんだよ、あいつ。意味わかんねえ。」

なんて独り言を呟いた俺は、スマホを放り投げて、課題に取り掛かる。だが、俺の顔は熱かった。

「声、聞けて良かった。」か。なんだか、嬉しい気持ちだった。なんで喜んでいる俺がいるのか、全く、わからないが。でも、なんだか、嬉しかった。

その後、俺は、もちろん課題に手をつけることなく、妄想に耽っていた。何を妄想してたかって?それはもちろん、内緒だ。




「はああああ、、、まさか、慎から折り返しの電話がかかってくるなんて。」

そんな独り言を呟いて、私は、スマホの画面を見る。慎からのメッセージは来ない。まあ、それがいい。

って言うか、私、さっきなんて言おうとした?電話をかけた理由は猫の写真のことじゃなくて、何?自分でもわからない。でも、言ったら恥ずかしいことだってわかる。一体、慎に何を言おうとしたの?


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