第5話 助けてくれる君に感謝
「はあ。」
古文の時間だというのに、俺はまた考え事をする。
そう、羅美奈のことだ。
あれは完全に誤解された。一緒に教室に入ったから…っていうか、そもそもチャイムが鳴らないのがおかしいだろ!何が点検中だよ!まあ、この話も羅美奈から聞いたしな…はあ…俺、何考えてんだよ…
「はあ…」
羅美奈も何か聞かれたのか?クラスメイトの奴らに。聞かれただろうな。なんとなく、そんな感じがする。逆に聞かれないなんて方がおかしいよな。教室に入った時点で、微かにざわざわしてたし。
「はあ……」
ポケーとしながら、与田先生が持つチョークを黒板で滑らせる姿を見る。与田先生は字がとても綺麗で、とにかく習字が上手い。それに、先生とはいえ、若い。確か、25歳だったはずだ。どうやら噂だと、男性教師からモテているとか。
「あ、あの、古宮君。」
「えっ、倉田さん?どうしたの?」
「ため息ついてどうしたの?大丈夫?」
前に座っている倉田さんが俺の方に振り向いて、聞いてきた。
「あ、えと…今、後ろ向いて、大丈夫なの?」
「うん!今は、みんなで話し合う時間だから大丈夫だよ!」
このほわほわしている感じ…こりゃあ、誠也も好きになるわけだ。この笑顔といい、喋り方といい、男という生物に響いてくる。
「そっか…」
「ほんとに、どうしたの?古宮君。何か困ってるなら、聞くよ?」
「いや、別に、大したことないから大丈夫だよ。」
俺は、ふと視線を感じた。ものすごくヤバそうな視線を。これは…うん、だよな。誠也だ。ちょっとどころではないヤバさだ。
「く、倉田さん!俺はもう平気だよ。だから、誠也のところにでも行ったら?みんなも自分の席から離れてるっぽいし。」
「で、でも!古宮君、ずっとため息ばかりしてるから…」
やばいやばい!ほんとにやばい。俺の心配は、とてもありがたいんだけど、君の彼氏の視線が痛いんだよ〜!頼むって、彼氏の方に〜!
「真美ちゃん、彼氏がこっちを見てるよ。」
「え?嘘!ちょっと、行ってくる!」
「うん、行ってらっしゃい。。。はあ、全く、何やってんの?慎。」
俺の頭がパンクしている最中に、助けてくれたのは、
「わっ!羅美奈!」
「ふっふっふ、今度、助けてあげたお返しをしてもらわないとね!」
「はあ、わかった、わかった。ありがと。お返しはするわ。」
「えっ、まじなの⁉︎ありがとー!慎。」
「まじで助かったしな。俺、ああいう視線に一番弱いんよ。」
「ふーん、」
「なんだよ!」
「別に。」
羅美奈は呆れた表情で、椅子に座っている俺を見下していた。
「だっさ!w」
「え⁉︎なんだよ、急に!」
「んじゃ、席に戻るわ」
「お、おう。」
なんだよ、あいつ。助けてくれたのはありがたいんだけどな、最後の「だっさ!w」は要らなかったわ!アホか!
「はあ。」
そろそろ時間なのだろうか。立ち歩いていたみんなが席に座る。
そして、与田先生の一方的な授業が再開した。
学校が終わるまで、慎の妄想劇をお楽しみください。
「逃げろー!」
仮面男が言う。
その言葉の通りに、学校いた全校生徒が校舎から校庭へと逃げる。
「なぜ、ここに来た。」
仮面男は誰もいない教室で一人、問う。
「ふっふっふ、とうとう、お前の正体を明らかにしたからな。まさか、高校生だったなんてな。俺は驚いているぞ。古宮 慎。」
誰もいないはずの教室から、声が響く。
「俺の本名まで知っているのだな。じゃあ、もうこの仮面も必要がないな。」
仮面男は、自分の手で、その仮面を取る。
「はっはっは!仮面がないと、お前はただの男だな!なんて、醜い姿なのだろう。元、仮面男よ。」
「黙れ。仮面があろうと、なからろうと、俺は俺だ。つまり、強さも変わらないのだよ。わかっているのか?」
「ふっふ、それぐらい、わかっている。俺はどれだけ、お前を調べたことか。そんなことはわかっている。」
そして、姿を現す。見た目は、真っ白なスーツを全身、身に纏っている細型の男性だった。
「キキキ!やっと、やっと、お前に会えた!ははは!」
「この!クソ野郎!」
俺は一発、白男にパンチを喰らわせる。しかし、効かない。
「そうか…お前は、まだ私には敵わない。残念だ。またの機会を楽しみしているよ。ふふふふふふふふふふふ!」
「クソ!クソ!いつもの敵は、パンチ一回で喰らわせると、倒せるのに、なぜだ。やはり、俺は勝てないのか?」
俺は、その絶望で教室の床に膝をつく。すると、そこに、何人かの生徒が廊下から、こちらを見ていた。
「すげえよ、慎。」
「お前、あの仮面男だったんだな!」
「慎、大丈夫だ。あいつを倒すために、俺たちも一緒に戦う!」
俺は、泣きそうだった。
その後、俺らはひたすらに共に特訓をし、パワーをつけた。
慎の妄想は長いため、ここで打ち切らしてもらいます。
どうぞ、現実の世界へ。お戻りください。
今日は掃除がない日のため、下校時間が早い。しかし、部活がある。
俺が入っている部活は小説部。あまり聞きなれない部活だろう。俺だって、この学校に来て、初めて聞く。まあ、俺がこの部活に入った理由は、急に見知らぬ先輩にオファーされたからだ。断りずらい環境だったため、仕方なく入ってみた部活だが、とても面白いのだ。だが、少し困っていることがある。
「ねえ、慎君。あなた、小説をまだ書いてないでしょ?」
そう言ってきたのは先輩の今井先輩だ。
「は、はい…」
「そろそろ、書いてもらわないと困るのよ…構想ばかり練ってないで、ちゃんと小説も書いてちょうだい!」
「わかりました…」
そう、俺は構想ばかり練ってしまう癖があり、全く執筆に手を出さないのだ。
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