第3話「妄想と青春」の狭間で
それぞれ自分が頼んだ昼食を、先程のテーブルへ運ぶ。
そこでは、羅美奈が待っていた。
「お、ありがと。羅美奈。」
「別にいいわ。」
「まあまあ、そんなかっかするなって。ていうか、お前、昼飯は?」
「ああ、今食べる。」
「え?」
「これ、パン。」
「あ、それ。」
「うん。」
「ふーん。そう。」
「何?w食べたいの?w」
こんな普通の会話だったんだ。こんなにも普通なのに、まるで何かが開くかのように、俺の隣にいるこいつの姿が輝いていたんだ。
こいつの顔が俺の方を向いて、下ろしている髪が右に川のようにサラサラと流れていく。その意地悪そうな顔で笑いかけてくる。
「おい、慎。」
「え、え?」
「何をぽやっとして、森さん見てんだよ。」
「は、はあ?そんなことない……はずだし…」
徐々に言葉が小さくなる。今、何を見たのか整理できていない。妄想ばかりする俺でも、こんなシチュエーションは考えたことない。あんなにもキラキラしていて。とても輝いていて–––
あれが、今のが、羅美奈?
「ちょ、慎。大丈夫?そんな妄想に耽ってると、ご飯冷めるわ。」
俺はゆっくり、もう一度、羅美奈を見る。
「あ、ああ。そうだな。」
やっぱ、なんともない。今日は妄想しすぎたのかもしれない。俺は、羅美奈から目を逸らす。そして出来立ての生姜焼きを口に運ぶ。
「ほんっと、バカなんだからさ。」
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