最後の一日の始まり
次の日は慌ただしい始まりだった。当然のようにアリアは眠りにつくことも出来ず、かと言って起きて何かをする気にもならず。寝床の中で考えては消し、考えては消しを繰り返すだけの時間を過ごしていた。
だけかが騒いでいる。その声はおそらく村の若い男だとまでは分かるが、誰かまでは特定できなかったのは、必死過ぎて声が変わってしまっていたからだ。
慌てて、寝間着から着替えると家を飛び出す。すでにみんな動き回っているが何をしていいのか分からないのか具体的な行動は見受けられない。
近くにアロンの姿を見つけて駆け寄った。
「アロン! どうしたの?」
アリアに気付くとアロンはその慌ただしい足を止めてこちらへ方向転換してくる。
「魔物が村に近づいてきているらしい。それが聞いたこともないくらいな軍勢で、周りを囲みながらって話なんだ。サリアを見なかったか? まだ家で寝てるのかな。アリア見てきてくれないか」
慌ただしいままアロンはまたどこかへ走り去ってしまった。アリアもじっとしていられなかったので用事を頼まれるのは気が楽になる。サリアを確認するために家に向かう。
それにしても村を囲むほどの魔物とは一体どれほどの数だろうか。百では無理だ。五百か千か。どちらにせよ、アリアには想像もつかない数字だ。
昨日はたった五体に苦しめられたのに。
やはりもっと早く、儀式を執り行っていれば助かる道もあったのだろう。しかし、異変に気が付いたのは昨日の事。であればどうすればよかったのだと、アリアはどうにもならない不安をどこにぶつけていいのか分からないまま、走った。
「サリア! 起きて!」
昨日、目覚めてから安静にしていたサリアはまだちょっと調子が悪そうにしている。アリアの声に反応するも大きく動くことはなく小さく寝返りをうっている。
「サリア。ごめん。起きて」
近づいて直接揺する。
「えっ。アリア? どうしたの朝早くから。何かあったの?」
「あったの。アロンが、村が魔物に囲まれてるって。とりあえず起きて着替えないと」
それで、どうすると言うのだ。この状況をなんとかできる人がこの村にいるとでも? ちらりとアウレールの顔が思い浮かぶ。彼ならなんとかできるのだろうか。昨日の強さは別次元だった。でも、だからと言って、村を囲うほどの数を相手にしてどうにかなるものか。
「うん。分かった。アリア手伝って」
やっと起きたサリアはまだ、状況を理解できていないのかのんびりしている。どうにかなってしまいそうだ。それでも、この村がなくなるのだけは避けたい。アリアは自分に何ができるのか必死に頭を働かせ続けた。
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