第8話-弱くなってしまった自分と、向き合う勇気が必要になる。-
長老の村の中を案内される。これが終われば、ルーサさんには村の外に行ってもらうようにお願いしていた。デンメスと一緒に行ってしまったというココアさんを探してもらうためだ。
パトリックと話した後も、色々と話していたが、ココアさんの話題になったときにお願いしてみたら承諾してくれた。ルーサさん曰く、手が空いてるし私も心配とのことだ。
「エイコムって、ここにいるの?」
「そうよ。というより来てもらったの。この辺りはエイコムの地元だしね」
やるべきことの1つ目についてはパトリックに任せるとして、今からやろうとしていることは2つ目のアレンの体を使いこなそうということ。3つ目に関しては全員同時というより1人1人と話していくしか無いと思う。
そのためにエイコムに師事しようという話になっていた。元々格闘の得意なガーダンの、しかも槍に関しては免許皆伝であるエイコム。動けなくなる前の俺の実力も知っているということで、これ以上ない適任だ。
エルフの里でパトリックと共に同級生の面倒を見てくれていて、話を聞いてわざわざ来てくれたらしい。ルーサさんについていきながら、向かっている先がエイコムの家であると説明される。
「あのさ、エイジェスって有名なガーダン?」
「う~ん。私は詳しくないわね。どうして?」
エイジェスというのはアレンの記憶の中にいたガーダン。もうこの世にいないのだろうが、もしかしたらと気になってしまっていた。
「アレンの記憶で見たガーダンで、エイコムにそっくりだったんだよね」
「へー。それなら本人に聞いた方がいいんじゃない?行きましょ」
その通りだと思いながら長老の村を進む。俺が留守にしている間に通っていたのか、迷うことなく飛んでいくルーサさんを見失わないようについていった。
△
「エイコム。来たわよ」
案内されたのは村の中でも比較的立派な家。そういえばエイコムの家を見るのは初めてだった。ほどなくして扉が開く。出てきたのはもちろんエイコムで、俺の姿を確認すると悲しい顔をした。
「ルーサ様、トキヒサ様。お久しぶりです。テルペリオン様のことは、残念です」
ガーダンはエルフほどではないが表情から感情がわからない。それでもエイコムはとても悲しんでいるように見えた。テルペリオンと、特別親しくしていたらしいので、きっとそのせいなんだろうと思う。
「エイコムさん。よろしくお願いします」
「はい。もちろんです。早速初めてもよろしいでしょうか?」
断る理由もない提案だった。すぐに承諾すると、エイコムはもう一度家に戻ろうとする。どうやらミキさんが居候しているそうで、一緒に訓練を手伝ってもらうために呼びに行くとのことだ。でもその役目はルーサさんが率先して代わった。ココアさんを探してもらうことになっているので、しばらく会えなくなるからその前に出来れば2人きりではなしたいのだろうか。それでできた待つまでの時間がエイコムと話す時間になってくれる。
「あの、1つ聞いてもいいですか?」
「はい。なんでしょうか?」
「エイジェスというガーダンに心当たりはないですか?かなり昔のガーダンなんですけど、エイコムさんにとてもよく似ているんです」
「エイジェス、ですか」
ピンと来ていない様子のエイコムに、それがアレンという過去の人物の記憶の中のガーダンであることを説明する。それを聞いて思い当たる所はあるようだった。
「それなりに普及している名前なので、確かなことは言えないです。一応、私の曾祖母の名前もエイジェスです」
曾祖母か。これは直感でしかないのだが、エイジェスとエイコムの曾祖母はきっと同じガーダンだろうと思っていた。だとすれば、少なくともその時代からエイコムの祖先とテルペリオンには繋がりがあったということになる。加えて曾祖母ということは、アレンは思ったよりは最近の人物なのかもしれない。
そんなことを話しているとミキさんが家から出てきた。サタンを身に宿し、真っ赤な髪の少女はどことなく楽しそうにしていた。
「やっほー。久しぶりー」
「うん。ミキさん」
「それじゃエイコム、あとはよろしくね。ミキちゃん、とトキヒサ。私はしばらく留守にするからね」
「またねー」
「よろしくお願いします」
ココアさんを探しに行くルーサさんとはここで一旦お別れになる。飛び去って行く姿が消えると、早速エイコムの訓練が始まるようだった。
「ではお二方、最初に手合わせしていただきます。移動しましょう」
手始めに、ミキさんと戦うことになるらしい。少し意外な展開であったし、今の俺の状態を見せていいものかと思うところはある。でも隠すようなことでもないし、今さら恥や外聞を気にしても仕方がない。
「よし。よろしくね、九十九」
「あ、ああ。よろしく」
ミキさんはテルペリオンが生きていたとしても魔王との戦いを手伝ってもらう予定だった1人だ。なので強力をお願いする人としては都合が良いと言える。直接戦ってもらうなどというのは、テルペリオンが逝ってしまった時点で無くなったことではあるが。
そんなことを考えながら移動を始める。長老の村の中にも訓練場があるらしく、連れだってそこまで歩くことになった。
テルペリオンの腕輪を見ながら、父さんとの訓練の日々を思い出していた。
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