第6話

そうか、わかった。ならついてこい。

すっくと立ち上がった隻眼の黒猫は俺の首の後ろを優しく噛んで持ち上げる。

そのままひゅんとジャンプ一つで箱から出た。

降ろされて俺はノワールを見上げる。

すげえ。かっこいい。

俺はじたばたやってどうにか乗り越えて尻餅をついたのに。

ノワールは俺という荷物を持ってなお一息に飛び越えたのだ。


尊敬の念を抱いた俺はじーっとノワールを見つめて伝えた。かっこいいと。

ノワールは戸惑ったようにそっぽを向いて自分の毛づくろいをして誤魔化した。

さあ、行くぞ。

はぁいっ!

俺を引き連れたノワールはゆっくりと何処かへ向かって歩き出した。

俺はまとわりつくようにちまちまと足を動かして後を追いかけた。


昨日走り回ったよりも動いていないのにすぐへばった俺は、ノワールに咥えられ運ばれた。

面目ない。

おろしてもらった場所は昨日水を飲んだへこみに近かったようだ。

そびえ立つなにかがいっぽんにほん…何本か並んで立ってる。

あれがなにかノワールに聞いたら、あれは木だという。

き。木か。そびえ立つなにかは木だった。うえのわさわさは葉っぱだと言う。

葉っぱ。あふろは葉っぱだったのか…。


「なあん」

あれ、ノワールの兄貴。おひさしぶりです。

見知らぬ猫が声をかけてくる。ちょっと年配の雌猫だ。片耳が切れているがきれいな銀色の猫。ロシアンブルーってやつだ。

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