第3話

少し休んで目を開けて匂いを嗅ぐ。

美味しいものはないかな。

でも水の匂いは近くにあった。

ふらつく足で前に進む。


なんかい前足と後ろ足を動かしたのか。

そこはちょっとへこんだ床に水が流れていた。

じゃぐち閉めろって怒られない?

へこんだ床のまわりをうろうろしたけどじゃぐち見えないな。

ここはてれびでみた滝ってやつだろうか。

とにかくもう喉が乾いて仕方ない。

思いきって飛び込む。

毛皮が濡れて気持ち悪いけど、水を飲むのに夢中になった。

家で出されたのと変わらない味だった。


お腹いっぱいまで飲んだあとは登るのに苦労した。

くそ、こんなところに壁があるとは!

悔しくてバリバリ引っ掻くが前足が痛くなっただけだった。

何度も飛び上がってどうにか壁を越えるとそびえ立つなにかよりは低いけれど影になるものを見つけて、そこに寝転んだ。

せっせと毛繕いをして毛皮を舐めて乾かす。


毛皮はなかなか乾かない。

また、風邪をひくかもしれない。

暖めてくれる手のひらもない。

箱のなかに戻ればタオルがある。

でも走り回ってきたから、戻りかたがわからない。

家のなかはここより狭かったからすぐ戻れた。

俺は半がわきの体でとぼとぼ歩き出す。

匂いを頼りに箱を探して歩く。

暗くなって寒くなってくる。

くちゅっとくしゃみが出た。

ぷるぷる震える頼りない小さな足で懸命に歩いて。

あと少し、箱が見えたところでうずくまった。

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