第4話

夏休み初日だというのに、学校では部活に勤しんでいる者達をよく見かける。


そんな時間の制約を受けたくない私は、帰宅部だ。


「終は何の部活入ってたっけ」


「私? 軽音楽部よ」


「あー、イメージ通り」


終のような人は大体文化祭のステージで無双する。


「何担当? 」


「カスタネット」


「そこはボーカルかギターでしょ。てか何でカスタネット? 」


「入部したのはいいけど、楽器一切使えなかったんよ。歌も上手くないし」


終と会話を進めていく内に、気付けば木々を抜けて校庭まで辿り着いていた。


校庭には予想通り、サッカー部が部活動に勤しんでいる。


部員は8人。試合がギリギリできるくらいの人数だ。


「あれ、佐々木じゃない? 」


遠くから見ても分かりやすい、坊主頭。


私達は日陰で指示を出していた監督の先生に事情を話し、数分佐々木との会話の場を設けた。


「何? 話って」


「終の件なんだけど」


私がその言葉を言った瞬間、佐々木は青ざめた表情で「許してください……」と呟いた。


一瞬こいつが犯人なのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。


「付き纏ったのは悪いと思ってます……でも諦めきれなくて……ごめんなさい」


佐々木は付き纏った事が原因で終が自殺したのではないかと考えたのだろう。


「反省はしてるの? 」


「はい! もう2度としません」


横で手を繋いでいる終に目を向けると、許そうと一度だけ頷いた。


「行っていいよ」


「ありがとうございます! 」


佐々木は私の言葉を聞いて、そそくさとその場から逃げ出した。


「悪い奴じゃないんだよね」


「次からどうしよう」


終を殺す動機のある人物が、佐々木以外に心当たりがない。


それに事件の証拠もないときた。警察が見つけられなかった時点で詰みだったのだろうか。


好きな人の為に何もできない自分を祟る。


「始」


「なあに」


「犯人探しは当分止めよ。まだ夏休みは長いんだし」


「でも……終だって犯人知りたいでしょ? 」


「知りたくないって言ったら嘘になるけど、それより始との時間を大切にしたい。普通ではありえない事が起きて、こうして始との時間ができたんだから」


「終……」


確かに彼女の言う通りだ。何故私は犯人探しに躍起になっていたのか。


「ありがとう終。家に帰ろ」


「昼ごはん、帰りにくら寿司買って食べよ」


「私のバイト代当てにしないでよ。それに食べれるの? 」


「今食べたいんだもん。麦茶の味感じれたんだし、大丈夫」


「穀潰しめ」







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