第3話

「次どこ行く? 」


まだ1日は中頃、太陽が最も興奮している時間の中で、私は涙の跡が残る終と歩いていた。


「学校とか。結局私の死因は他殺と予想しているんでしょ? それじゃあ怪しい人から調べていかないとね」


「あ! あのストーカーして来たって言う男? 多分サッカー部だから今学校で部活してると思うけど」


「そうですわ」


「何ですわって」


「キャラ立ってた方が面白いかなって」


「今更でしょ」


私や終の家から学校までは電車を使わなければならない。


呉線安芸津駅から風早駅で降りて徒歩3分。


豊田高校というのが私と終の通っている学校だ。


私達は安芸津駅に着くと、切符を1枚だけ買ってホームへと入った。


「終がまだ生きてたら、一緒に学校へ登校なんてできたのかな」


「そうだね。それじゃあ今日が初めてって事だ」


確かに、もし一緒に学校へ登校するとなったら、今のような感じなのだろうか。


そう思うと少し恥ずかしい。雨の日も、雪の日も、互いに笑い合いながら学校へと向かう、そんな情景がふと浮かび上がった。


「そろそろ電車来るよ」


私達と他の乗客が数人、電車から出てくる人々と入れ違いで入る。


選び放題の指定席で、私達は2人横並びの席に肩をくっつけながら座った。


窓の外には瀬戸内海が見え、見るだけで気持ちを穏やかにしてくれる。


風早駅は終が死んだ場所。駅が近づくにつれ、心細さからか私の手を握って来た。


「あ、初めて終から手繋いだ」


「好きな人の手を繋ぐって、いいね。心にゆとりができる」


電車に揺られ5分、風早駅に降りたのは私達だけだった。


風早駅は無人駅で、ホームからは海がよく見える。


駅を出て直ぐの自動販売機で、麦茶を買う。


私は少し飲んだ後、終に渡した。


「え? 」


「飲んでよ。間接キス、1回はやってみたかったんだ」


「でででも、私幽霊だし、いらないし! 」


いつも強気な彼女がおどおどしている瞬間が一番可愛い。


「お願い! 」


「──まあ、そこまで言うんだったら……」


終は私が手渡した麦茶を手に取ると、飲み口に口をつけて飲んだ。


「あ、味感じる」


「幽霊でも味感じれるんだ……それと間接キス、しちゃったね」


「改めて言わないで、恥ずかしい……」


彼女の頬は赤く染め上がる。


「いいじゃん、恋人なんだし〜」


「たった1日で恋人っぽい事しすぎて、とても心が持たんわあ」


そんな会話中にも手を繋ぐのは忘れずに、海沿いを歩きながら高校へと向かった。


「──着いた」


そんな終の声と共に、私達は学校の門の前で立ち止まる。


入り口には木々がお出迎え、校庭の奥には瀬戸内海の海が広がっている。


まるでリゾート地のような風景が、私達の学校にはあった。


「それじゃあ、行こっか」








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