第31話 (最終話)今世の器用貧乏が提示した落とし所。
ここでコーラルは、ミチト達が召喚術ではない炎命術で現れた存在だと気づく。蘇ってしまった命の落とし所がわからない。不安な顔でヘマタイト達を見ると、ヘマタイト達も気付いたのだろう。
落とし所を悩んでいた。
ミチトはリナの前に行くと、「リナさん、死の直前、タシアに真実を話した日の後で、2人で話した通りになったよ。いいよね?」と聞きながらキスをすると、「うん。ミチトの思う通りにして」と言われる。
この言葉にアクィ、ライブ、イブが、「ミチト?」、「何考えてるの?」、「ミチトさん?」と聞くと、ミチトはアクィ達にもキスをしながら伝心したのだろう。3人とも驚いた顔の後で、「それがいいのかもね」、「そうだね」、「やってミチトさん」と言う。
ここで前に出たのはヴァンで、「ダメだよ。ミチト・スティエット。何をするかはわからない。でも何をしようとしているのかはわかる。俺はそれを認めない」と言ってミチト相手に圧を放つ。
ミチトは困り顔で「ヴァン君…」と言って、何と言って説得をしようと悩んでいると、ヴァンが「ミチトさん、俺は命を無駄にする行為は嫌いだよ。悪い事をしていない、生きられる人間は生きるべきだ。まずは何をするか教えてよ。とんでもない術だよね?どうしてそんなものを思いついたの?」と聞いた。
ミチトが黙ると、リナが「教えてよあげなよ。貴重な後進だよ」と言う。
一瞬の間の後で、ミチトは「絶縁術」と言ってから、「昔、メロが俺の実の娘じゃない事を気にしていたから、魂を結びつける造縁術を作った。それは一度だけスードさんの為に使っただけで、後はローサさんに禁術指定されてしまったし、イブ達から命の価値がボヤけるからと言われて、禁術書にも書かなかった。だが造縁術の一式には欠点があった。両親が存命だと魂のつながりが変えられない。メロには母のマロも、名も知らない父親も存命だったから、二式を作ってなんとかしようとした際に思いついたのが、この絶縁術だ」と言った。
「絶縁術、魂の繋がりを切り離すの?」
「そうだよ。本当ならメロにそれを行って、俺の子供にしたかった」
ヴァンは話を聞きながら、真模真式として必死に術を理解して、「今ミチトさんはそれを行って死ぬつもりだった。絶縁術で魂の繋がりを切り離すから、遺髪を使った転生術も、魂を見つけて使う召喚術もさせなくしようとした」と聞く。
ミチトは驚いた顔で、「君は本当に凄いね」と言った後で、自分の掌を見て「そうだよ。今回、君を術人間にしてしまったのは、俺が蘇ってしまったからだ。真式の奴が根回しをしても限界があった。これはリナさんと、いつの日か俺達が悪用されたら使おうと決めておいたんだ」と言った。
ミチトの考えは間違っていないと妻達が頷く中、ヴァンは話を聞くだけ聞いていたが、最後には「俺は認めない」と言って、「あー、貫かれた所痛いなー」と言い、「あー、俺がおかしくなった時に、助けてくれる人がいないと困るなー。オルドス様でも解決できなかったら困るなー。俺はもう真模真式で、コーラル達には助けられないのになー。あー、これも貫かれたからだー」と続けると、「シャヘルもユーナもペリドットもヘマタイトも、勿論コーラルもだけど、訓練足りないのに見捨てるなんて無責任だー」と言うだけ言うと、返事も聞かずに「さあ、帰ろうよ。俺またミチトさんの料理食べたいし、リナさんの料理も食べてみたい。コーラルも料理教わりなよ。あ!折角だから別荘行こう」と言い出すと、ミチトにだけ「あらら、お帰り器用貧乏」とオルドスが語りかけた。
「ちっ、お前がもっとしっかりしてたら、こんな事にはならなかっただろ?」
「それはそれさ、ヴァン君の目が黒いうちは命を無駄にできないからね?」
ミチトは「ちっ、分かってるよ」と悪態をついて、大人しくヴァン達と別荘へと向かった。
この後…ミチトの復活は僅かな存在にだけ伝えられた。
とりあえずやり過ぎるミチトは、スーゴイから「闘神、この国を助けてくれ」と言われると、「えぇ?少しだけですよ?」と言いながら、模式を生み出してコレクションする貴族や人攫いを根絶やしにしてしまう。
その後は人里離れた土地や天空島、海底都市で家族水入らずで暮らした。
ヴァン・ガイマーデは後年、石棺で眠るイブ…コーラルを救ってから、アゲースを倒してミチトを救うまでの物語を、ザップと共に古代語で書くと最後だけ変更した。
[アゲースの炎命術で蘇ったミチト達は、正気に戻ると今世に自身の居場所ではないと、絶命術で命を絶って消えた。志を受け継いだコーラル・スティエット達、スティエットの子孫が、力を奮い人攫いや無限術人間を産み出す悪を討った]
最後の一文を読み終えたザップは、「ヴァン、僕はとても素晴らしいものが読めて心躍っているよ」と言ってニコニコとしていると、ヴァンは照れながら「えへへ、良かったです」と言う。
ザップが「君には文才まであるんだね!」と褒めると、ヴァンは「いえ、他の本を読みながらなんとか書いたら、そう見えるだけですよ」と返す。
ザップがウインクをしながら「またまた、謙遜だね」と言った時、ヴァンは「まあ俺、器用貧乏ですからね」と返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます