第30話 子供達との別れ。
フユィの言葉に、ヘマタイトは気が遠くなって無限機関を外すと、イブから容赦なく「ダメです」と言って蹴られる。
ラミィが「それは良い考えね。あのシャヘルもメロ姉様の血筋に見えないくらい甘えているから、サルバン流を叩き込んであげましょう!」と言うと、メロに「遅いよ!もっと速く!止まらない!真式なんだから二刀剣術と術を同時に長時間連続して放つ!」と言われて、ヘトヘトのシャヘルが「勘弁してくれ」と弱気になってメロがキレる。
唯一全てに喜ぶコーラルは、アクィから師事を受けていて「他も受けたいけどアクィさんとがいい!どうしよう!」と言っている。
ヴァンはロゼに言われた腕輪の複製を練習しながら、リナに料理のコツを聞く。
そんななんとも言えない時間を過ごした。
アゲースを凄いと思ったのは、なんとか生き残ろうと決して諦めなかった事だが、終わりはくる。
ミチトは禁術の絶命術を放ってアゲースを殺すと、インフェルノフレイムで肉体を焼き払った。
「さて、終わらせよう」と言ったミチトは、タシアを呼ぶと「会えて嬉しかったよ」と声をかける。
「僕もだよ。お父さんを止められて良かったよ」
「本当、タシアは凄いね。ヴァン君の負担を考えて本気で動けない中、いくら真式の奴が俺達の邪魔をして、弱体化をしていたからって相当なモノなのに、最小の動きなのに最大の効果で、俺が放つ本気のサンダーデストラクションを撃ち落とせるのはタシアだけだ」
ミチトがタシアを抱きしめるとリナ、アクィ、イブ、ライブと続いて抱きしめ終わるとタシアが消える。
次はラミィだった。
ミチトが「ラミィ、ありがとう」と声をかけると、ラミィは気品あふれる表情で「いいえ、貴い者として当然の事ですわ」と言う。
「本当頼もしいね。ヘマタイトやコーラルがキチンとしているのも、ラミィ達がサルバンの心を大事にしたからだね」
ラミィは「それを言うならママですわ」と言ってアクィを見て微笑み合うと、2人して泣いた。
ラミィも皆と抱き合うと消えた。
その後の子供達も皆ミチトと言葉を交わし、母達と抱き合うと消えていたが、まずはトゥモが違っていた。
ヴァンの前に立つと「ヴァン、ありがとな。召喚術は宿題にしようと思ったら、三式まで作られたから、四式出来たらそれで俺を呼んでくれ」と言って笑うと、ヴァンも笑顔で「助かったよトゥモ」と返す。
「よく言うぜ。なあ、この先ってどうなるんだ?」
「俺の予測通りなら、ミチトさんの思い通りにはさせないよ」
トゥモはミチト達を見てから「なら安心して逝ける。悪ぃな」と言うと、ヴァンは「ううん。ありがとう孤高」と言って握手をした。
ヴァンと言葉を交わしたトゥモは、ミチトに「やっぱり俺のパパは超えられない壁だったよ」と漏らすと、ミチトは「よく言うよ、トゥモはこだわりを持つから負けたけど、こだわりを持ったから強いんだろ?」と返す。
トゥモはミチトに抱かされながら、「禁術書、名前が残せたよ。ロゼやラミィにはやれなかった。俺だけだ」と喜ぶと、「本当だね」と言われてトゥモは泣いていた。
ジェードもヴァンの前に来て、「本当、やべえ根性。本当に助かったぜ」と言うと、人懐こく笑ってヴァンの頭をくしゃくしゃに撫でて、「俺の子孫から真式が生まれた。ソイツと滑走連斬をやれた。全部ヴァンのおかげだ」と言う。
「ううん。俺は弱いから皆の力を借りただけ」
「それならそれで良いんじゃね?出来ない事で足掻くより、できる事で追い付く。俺様の偉大な言葉だ」
ジェードはミチトに抱きつくと、「何年経っても、子供は親に抱きつくと照れるし嬉しいな」と先に言ってミチトを喜ばせる。
「ジェードが居なかったら皆大変だったよ」
「当然だぜ」
「俺は君を誇りに思うよ」
「でしょ?」
ジェードは最後まで不敵な態度で、軽口を叩きながら消える。
ロゼもヴァンの前に来ると、「大馬鹿、身体辛かったらコーラルに甘えとけ、後はこの先は任せる。腕輪作りの才能も見えたから、王都のモンアードに秘蔵してある、とっておきを見ていいよ」と言うと、ヴァンの返事を待たずにミチトの元に行く。
「父さん、俺は真式で良かったよ。この力で皆を助けた。今も助けられたよ」
「本当だ。ロゼは偉大になったね」
微笑んだミチトに、ロゼが「父さん?俺でもわかるんだからね。それはダメだよ」と言うと、ミチトは困り顔で「でも…俺は…」と言ったが、ロゼは「ヴァンに任せたからね」と言うだけ言うと、さっさと母達と抱き合って消えた。
メロもヴァンの元に来る。
「えへへ。助かったよ」
「俺こそ助かったよメロ。まずはシャヘルの事、陰ながら国を守ってくれたトゥーザーのお陰で、小さなゴタゴタはあっても、大きなゴタゴタは無いんだ。後は召喚術で呼んですぐにキレたフリしてって頼んだのに、やり切ってくれて助かったよ。アゲースから余裕を奪い去りたかったんだよね」
「お安いご用だよ。怒ったのは嘘じゃないしね」
「それでもね。お礼言わせてね」
メロは頷くとミチトの所に行って、「パパ、また会えてよかった。メロはやっぱりもうパパの娘なんだなって改めて自覚したよ」と言って抱きつく。
ミチトは「当然だよ。いつも言っていたよね?メロは大好きなパパと、普通のママと、大好きなお母さん達の娘なんだよ」と言い、メロが「本当だ。パパ…大好き」と言うと、ミチトも「俺もだよメロ」と言って力を込めて抱きしめる。
暫くミチトが離れないでいるので、メロは「長いよ!」と言って真っ赤になっていた。
メロはリナの前に行って「お母さん、お母さんが術人間でビックリだよ」と言って笑いかけると、リナも「ごめんね。ミチトと話して本当の隠し球にしたんだよ。タシアには封魔術の関係で仕方なく話したんだ」ともう一度説明をした。
頷いたメロはアクィの元に行き、「ママ、会えて嬉しい」と言って目に涙を浮かべると、アクィも涙を浮かべて「私もよメロ」と言った。
「メロ、家族に恥じないために頑張ったよ」
「ええ、愛の証が全部見聞きしていたわ。自慢の娘よ」
メロは涙で顔をグシャグシャにしながら皆と抱き合ってから消えた。
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