第29話 正義の悪魔の処刑。

穏やかな空気のままアゲースの処刑になる。

ミチトは「んー…。奪術術は止めていいよ。このメンバーならどうやっても逃げられないし」と言って処刑を始めた。


確かに、無限術人間真式のミチト、リナ、タシア、シア、コード、ラミィ、フユィ、トゥモ、ロゼ、コーラル、ヘマタイト、ペリドット、シャヘル、ユーナに囲まれて、模真式のアクィとヴァン、セレナ、摸式のイブとライブとメロ、そして術人間ではないが、遜色のないジェードとベリルに囲まれていていては、転移術を知らないアゲースにはどうする事も出来ない。


だがアゲースはかつてのジャスパー・ワーティス同様に、攻撃よりも防御に特化した術人間で、生半可な攻撃は即座に回復してしまう。


ヴァンは改めて処刑が始まる前にアゲースの前に行くと、「とりあえずアゲースさあ、炎命術はコスト面で失敗なんだよ。ミチトさんやオルドス様が土や水から命を作る事の意味を考えた方がいいよ。後は盲信術にしても、きっと対象が眠っている間に時間をかけて使う術だよね?疑いを持つと乱れるなんて失敗だよ。戦闘中に重ねがけも出来ないしダメダメ」と人懐こい顔で注意だけすると、「まあ禁術書には未完成で書いておくね」と言って離れる。


ミチトはユーナとシャヘルで殺しきれないアゲースを見て、「ふむ」と言うと怖い顔になる。

ミチトがこの顔になると子供達は呆れ顔、アクィが「出たわね正義の悪魔」と言うと、他の妻達は「うんうん」と頷く。

そしてユーナ達は4ヶ月前の恐怖が蘇り、真っ青になっていた。


「召喚術かぁ、あんまりやるべきではないけど面白いね」と言ったミチトは、「召喚術、パテラ・サルバン」と言うと、光と共に目の前にパテラが現れて、「ぬぉ!?ここはどこだ!?スティエット!?何故若い姿を!?」と聞くが、ミチトはロクに答えずに「目の前の銀髪が敵です。俺達をあの世から呼び出して悪さしたんです。パテラナックルですよー」と言うと、パテラは条件反射で「何!?パテラナックル!」と言いながらアゲースを殴り飛ばす。


アゲースが死なずに踏ん張ると、ミチトは「ダメダメですね。さよならパテラさん」と言ってパテラを下げてしまう。


パテラは「スティエット!あんまりだ!もう一度チャンスをくれ!」と言いながら消えていった。


「ふむ。パテラさんでもあんな感じだから…」と言うと、「タシア、シア、コード」と呼んで「あのユーナって弱いよね。技を教えながらアゲースを痛めつけてよ」と言い出す。


ユーナは真っ青顔で「何!?」と言うが、コードは「任せてよ!」と喜び、シアは「それいいね!」と言う。タシアは甘くないわけで「お父さん、ファットチャイルドを使う癖に弱いのがイライラするから、ナハト叔父さんを呼んでよ」と言うと、ミチトはウキウキと「ナハト来い」と言ってナハトを呼び出す。


ヴァンが驚きながら「召喚術って言わない?」と突っ込むと、横でラミィが「トゥモ、アレはもう三式ですわね」と言い、トゥモがヴァンの呼び出した禁術書に召喚術を書きながら、「パパめぇ…」と漏らす。


ナハトは「お兄さん!?若い?久しぶりです!敵ですか!?」と訳のわからない順応をしていて、タシアが近づくと「ナハト叔父さん!あのユーナって子は僕とシアとコードの子孫なんです。僕が後年シア達と作った、あのファットチャイルドを使うんですが弱いんです」と説明すると、ニコニコとしていたナハトの顔が鬼に変わる。


殺気を放つナハトを見て、ペリドットとシャヘルが「あ…あれが騎士団最恐?」、「ユーナは死んだな」と言うと、その横でヘマタイトが、「ペリドットとシャヘルもだと思いますよ」と声をかけて指を指すと、視線の先にいたメロやジェード、ライブなんかがニコニコと手を振ってきている。


ペリドットとシャヘルは真っ青な顔で、「勘弁してくれよ」、「…嘘だろ?」と言っている間に、ナハトが「貴様ーっ!図体だけ一人前なのか!?才能だけで技を磨かないのか!」と言いながら、ユーナを殴り飛ばしてファットチャイルドを奪い取ると「これくらいして見せろ!チャイルド!」と言いながらアゲースを斬り飛ばす。


血まみれで吹き飛びながら逃げようとして、コードとタシアに捕まるアゲースを見ながら、ペリドットとシャヘルが、「速え」、「あの剣であの動き…ありえん」と言うと、またヘマタイトが「いえ、あり得ないのは確かですが、多分やらされますよ?」と言う。


ペリドットとシャヘルはもう一度ご先祖様達を見ると笑顔でニコニコと手招きするように手を振っていて、目が合うと気絶したくなった。


この後はもう地獄だった。

そう、オルドスは楽しそうにそれをトウテやラージポットの聖地や王都、海底都市や天空島に見せて、皆初めは器用貧乏の再来に目を潤ませたが、すぐに表情をこわばらせながら見る羽目になる。


「遅えよ!ペリドット!さっさとアゲースをなます斬りにしろ!」

「お前が速いんだろジェード!」

「生意気言わない!ベリル!追いかけて捕まえるたびにサンダーインパクト!」

「うん!」


ペリドットはジェードとライブに捕まってコレでもかと滑走連斬を仕込まれて「滑走三十連斬が出来るまで、おわんねーからな」と言われ、ヘマタイトはコードとロゼから無限機関を強要され「ヘマタイトー、無限機関30回連続、休まないでね」、「え!?」、「ほらほら、俺より遅れると母さんが蹴り入れてくるよ」、「うふふふふ。頑張ってくださいねー」、「が…頑張ります」と言っていると、フユィが「ねぇラミィ?あの子サルバンの子でもあるのよね?鍛えてあげようよ」と言い出す。

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