第19話 孤高との共闘。

二週間のトレーニングは術を使わない単純な反復トレーニングで、あの日のイブとライブの動き、アクィに関してはコーラルが見てきた、愛の証の動きを参考に対応して行く。


「真式は術を使わなければ貯まるんだろ?今は貯めてよね〜」と言うヴァンは、コーラルに見つからないように夜中なんかは水場で頭を抑えて苦しんでいて、ユーナがその度にバレないように手を尽くす。


今も「ヴァン!無理をするな!」と泣きそうな顔で声をかけるユーナに、「やだ…よ。今…が…命の使い所だろ?」と返すヴァン。


「だが!」

「術が溜まって…、俺より大きくなろうとしてるから…痛いはず。使えば落ち着くけど無駄遣い出来ない…」


ユーナは真式として最適解を必死に模索して、「なら俺が無限魔水晶を作るから、そこに貯めろ。決戦の時に使えばいい!」と言う。

ヴァンは困り笑顔で脂汗を浮かべながら、「ありがとうユーナ…、でも悪いよ。夜更かしもさせてるし」と言うが、ユーナは「ふざけるな!頼れ!頼ってくれ!」と声を張る。


ヴァンが嬉しそうに「…ありがとう。じゃあ頼むね」と言うと、ユーナはすぐに無限魔水晶を作ってヴァンに持たせる。

ユーナの無限魔水晶は効果があったが、すぐに満タンになるとユーナが次の無限魔水晶を用意してシャヘル達が怪しむ。

そこはヴァンが「真模式も模真式も上限が決まってて、勿体無いって愚痴ったら作ってくれたんだよ」と誤魔化すと、皆が無限魔水晶をプレゼントしてくれた。


こられによりヴァンは、決戦前には気付けばラージポットをステイブルさせた時のミチトと同じ、35個の無限魔水晶を持つ事になっていた。


決戦の場所はまたキュウヨ大河の辺りにした。

出がけの挨拶はヴァンには塩対応のファンは、「帰ってくるクソガキ相手に言うことなんてねえ」と言うだけで、コーラル達には「ちゃんと帰って来てくださいよ」と言っていた。



二週間目の朝、六つの影が見えた。

もう誰かはすぐにわかる。


アゲースは「おやおやおや、ヴァンだ。生きていたんだね?」と言ってヘラヘラ笑うと、「でも君の隠し球は通用しないよ〜」と言う。


そこには予想通りリナの姿があった。

リナも正気を失っていてヴァンには気付かない。


アゲースはほんの少しだけ恨みがましい顔と言い方で、「君のせいでミチト・スティエットが不安定でさ、術を使いたくなかったのにリナ・スティエットを生み出さなきゃいけなくなったんだよ」と言うと、ヴァンは平然と「そうだろうね。その術、欠点だらけだからね」と返した。


ヴァンの声に顔を歪めたアゲースは、「まあいいや。今度こそ君達を殺して終わりにするよ」と言うと、「『またあの敵だ。リナを奪われる前に倒してしまえ』」とミチト達に指示を出した。

ミチトはヴァンを見て「お前、俺が殺した?生きていたのか?リナさんは取り戻した。今度こそ殺す」と言って殺気を放った。


「やらせないよミチトさん」と言ったヴァンは、「ユーナ!セレナと離れずにアクィさんの迎撃!ヘマタイト!イブさんから目を離さないで!ペリドットはライブさん!シャヘルはアゲース!コーラルは俺を守って!」と指示を出す。



皆がヴァンの指示に従って動くと、ヴァンは左手にユーナが作り出してくれた無限魔水晶を持つと、一瞬顔をしかめて「いきなり本気だ!召喚術!トゥモ・スティエット!」と言って召喚術を使った。

光の後に現れたのは赤い髪をした高身長の青年で、目鼻立ちは整っていて大きな目が印象的だ。


青年が「ここは?パパ?」と状況を見て呟くと、ヴァンが「トゥモ・スティエット!聞いて!俺はヴァン!」と言った。


トゥモはヴァンを見て「お前?なんだ?模式?真式?真模式?模真式?壊れかけてる?」と言ったが、ヴァンは首を横に振って、「俺のことは後!貴方の召喚術を完成させたんだ!話すのは長いから伝心術させて!」と言って、トゥモの手を取って伝心すると、トゥモはキレたミチトに近い顔で「へぇ、成程。そう言うことか、炎命術ね。確かに盲信術は何が起きるかわからないな。それにパパもママもイブママ達も全盛期の姿か、あれを完全撃破してから、あの真式をブチ殺すわけだ」と言う。


ヴァンが「うん。作戦は伝えた通り。頼めるよね?」と聞くと、トゥモは「おう、任せな。だけどその為に壊れるって凄え根性してんのな」と言ってヴァンを見た。

ミチト達は突然現れた青年のトゥモに驚き、手を出しかねている。


「俺は良いんだ。ここに居るミチトさんの末裔、コーラル達とこの国を助けたい」

「へぇ、お前みたいな奴は好きだから、この孤高が助けてやるよ。で?俺は道標になれば良いんだな?最後は俺も暴れるぞ?」


「勿論だよ。兄弟子」

「兄弟子?」


「俺もザップ様の最高の生徒に選ばれたんだ。だから増幅術も完成させられたよ」


自信が8割の完成度で頓挫した増幅術をヴァンが完成させていた事に驚き、「マジかよ!どうやった!?」と聞くトゥモにヴァンは「戦闘中に話すよ。まずは誰?」と聞いた。

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